2018年(平成30年) 6月12日(火)付紙面より
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今年で37回目を迎えた「花の能 羽州庄内松山城薪能」が9日夜、酒田市の松山歴史公園多目的広場で開かれた。かがり火の下、地区に伝わる松山能(県指定無形民俗文化財)が演じられ、幽玄の世界が観客を魅了した。
松山能は約360年の歴史を持ち、明治以降は地元の演能団体「松諷社」(榎本和介会長)が継承。薪能は1982年、松山歴史公園の完成を祝って始まり、以来、毎年この時期、松山能振興会が中心になって開催。霊力が宿る桜花が散った後、悪霊が悪さをするのを防ぐ「花鎮(はなしずめ)の儀」になぞらえ、豊作への願いを込めて演じている。
午後6時からの狂言「棒縛り」で座が和んだ後、太鼓の音とともに舞台両脇の薪の籠に火が入れられ、かがり火がともった。徐々に夕闇が濃くなっていく中、能「殺生石」が演じられた。後段になり、霊力によって石の上を通る鳥を殺すなど悪事を働いてきた野干(やかん、妖狐)が赤頭の正体を現すと、クライマックスに。観客は、背景の松山城大手門のしっくいの壁や、大きな松による天然の鏡板、時折火の粉を舞い上げるかがり火という独特の雰囲気の中、引き込まれるように見入っていた。