2006年(平成18年) 9月1日(金)付紙面より
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名園として知られる酒田市御成町の旧小山家別邸「寄暢亭(きちょうてい)」が30日、大手食肉生産・加工の「平田牧場」(本社・酒田市、新田嘉七社長)の所有となり、将来は市民に開放するなど、市中心部の観光振興に生かされることになった。
寄暢亭は1890(明治23)年ごろ、廻船問屋を営んでいた素封家、小山太吉の別邸として整備された。約4200平方メートル(約1250坪)という広大な敷地の庭園に、庭全体を座って鑑賞できる別邸「寄暢亭」、茶室、2階建てのあずまやなどがあった。
庭園は、これも名園と言われる清亀園(浜田一丁目)などを手掛けた庭師、山田挿遊(1830―96)の作で、湧き水をたたえる池を中心にしたすり鉢状の土地に、松や杉など高低の花木を配し、市中にあって深山幽谷の雰囲気を醸し出している。
1981年に「本間ゴルフ」(本社・東京都)の所有となり、迎賓、研修施設などに活用されてきた。現在は寄暢亭や茶室、あずまやはなく、同社が建てた鉄筋コンクリート3階建て、延べ床面積約500平方メートルの建物が建っている。
しかし、同社が昨年6月に民事再生手続きに入り、企業再建の途上にあることなどから、売却を模索。一時は都内の大手デベロッパーに売却する話が進んでいたが、平田牧場が「地域の文化財として残したい」と買い取りを申し出て、30日付で取得した。
平田牧場の新田嘉一会長は「これほどの名園はそうなく、見ているだけで心が豊かになる。もし中央のデベロッパーに渡れば、平地にしてマンションを建てるという話になりがち。酒田の先人が築いたこの財産を、ぜひこのまま後世に残したい。これまでは公開されてこなかったが、将来は市民に開放してみんなに見てもらい、酒田の観光振興に役立ててもらいたい」と話している。
寄暢亭の庭園を背景に立つ平田牧場の新田会長