2006年(平成18年) 9月2日(土)付紙面より
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出羽三山世界遺産育成シンポジウムが31日、鶴岡市羽黒町の羽黒コミュニティセンターで開かれ、基調講演やパネルディスカッションを通じ、参加者が「民間の山岳信仰が育んだ出羽三山等の文化財と風土」の世界遺産登録に向けた取り組みについて認識を深めた。
県や鶴岡市、地元住民でつくる出羽三山魅力発信協議会で組織する実行委員会が開催し、約300人が来場した。はじめに世界遺産・白川郷(岐阜県)でフィールドワークを続ける筑波大大学院人間総合研究科助教授の黒田乃生氏が「世界遺産を目指して?その意義と地域の取り組み」と題し講演した。
黒田氏は「世界遺産が増え続けている中で、世界遺産の概念そのものが考えられており、『顕著な普遍的価値』が求められるようになった。登録には国や地域がいかに価値を見いだしていくかが重要になる」と解説。世界遺産の新たな動きとして「文化的景観」で世界遺産に登録されるところが増えている傾向を紹介し、出羽三山については「月山や羽黒山そのものだけでなく、手向集落の営み、庄内平野の自然など一体的に価値を見いだしてほしい」などと提言した。
白川郷については、世界遺産に登録されてから観光客が2・5倍の年間約150万人が訪れている一方で、地域の歴史を飛び越えて世間にイメージ化される点や、観光客が求めるものとのギャップが生じていることなどを指摘。「地域の人がしっかりとしたイメージや戦略を持っていないと、のみ込まれてしまう」と地域一丸の取り組みの重要性を話した。
引き続き、「過去から未来へ繋(つなぐ)ぐ地域の資産」のテーマでパネルデスカッションが行われた。後藤赳司出羽三山山岳宗教研究所主幹、酒井賀世致道博物館学芸員、志田靖彦六十里越街道保存推進委員長らがパネラーとなり、活発に意見交換した。
シンポジウム開催後は、夕方から同会場で「羽黒山ファンタジー『山楽祭』2006」が開かれ、地域伝統芸能や羽黒中2年生による番楽「大田楽」が繰り広げられた。
出羽三山の世界遺産登録に向け、機運を高めたシンポジウム