2007年(平成19年) 10月31日(水)付紙面より
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「森と木を見て触って感じる日帰りバスツアー」が30日、庄内海岸林などを巡るコースで行われ、荒廃した森林や、地元材を利用して建てられた小学校の見学などを通して、森林が持つ大切な役割や抱える問題などを学んだ。
森林に対する県民の理解を深めてもらおうと、県が初めて企画。鶴岡、酒田両市から18人が参加した。
一行はまず、県森林研究研修センターのバスで酒田市高砂に向かい、酒田北港緑地展望台に上って北は遊佐町吹浦、南は鶴岡市温海地域まで広がる海岸林を遠望。県の担当職員から、先人が苦労を重ねて植林した庄内海岸林の歴史や、延長約33キロ、面積約2500ヘクタールあって国内でも有数の規模を誇る砂丘林であることなどを聞いた。
続いて同市古湊地区に移動、成長したニセアカシアが倒れて荒れた海岸林を見学。県職員が「ニセアカシアは根が浅く、強い風が吹くと倒れるため、クロマツの代わりにはならない」と説明。マツクイムシによる松枯れのメカニズムや、昨年度で8万本余りの被害があった実態などを話した。
そして、「やまがた緑環境税」を活用して同地区の約3ヘクタールを整備することを紹介。その際も、薬剤散布などによる予防措置や、被害木を伐採し焼却または木質ペレットなどとして有効活用する特別伐倒といった駆除措置などを、トータルで講じることが森林を守る―とし、「とにかく森林の中に入って現状を見てもらい、そのうえでどういう森林にしていくか、地域で考えてほしい」と声を掛けた。
参加者の一人は「思っていたより荒廃が進んでいる」と話し、やまがた緑環境税については「今の時代に合った税金だと思う」と理解を示した。
一行はその後、マツクイペレットをボイラーの燃料にしている同市山楯の温泉施設「アイアイひらた」や、地元材をふんだんに使って建てられた三川町の東郷小学校を訪問。また庄内町狩川で、環境税の対象になっている荒廃森林を見学した。
荒れた森林に入り県の担当職員から状況を聞くバスツアー参加者
2007年(平成19年) 10月31日(水)付紙面より
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庄内地方選出の県議と、地元の農協関係者たちが庄内農業の振興策について意見を交わす「庄内農業振興懇談会」が29日、ホテルリッチ&ガーデン酒田で開かれた。農協側からは「庄内農業は死に体になりつつある」など窮状を訴える声とともに、食料自給率向上という国の抜本的な姿勢の確立や、県の農林水産予算の増額などを求める声が相次いだ。
全農庄内本部(黒井徳夫運営委員会長)と庄内農業協同組合経営者協議会(阿部茂昭会長)が初めて開いた。本年度から本格始動した品目横断的経営安定対策や、米価下落による農家収入減の深刻化など、庄内農業を取り巻く情勢が大きく変化し、厳しさを増す中、課題解決の糸口を探るもの。
出席したのは、公務が重なった阿部信矢議長を除く庄内選出県議10人と庄内5農協、全農庄内本部、山形農協中央会、県庄内総合支庁の関係者、合わせて約40人。
はじめに全農庄内本部が内部でまとめた庄内農業の振興に関する要望・課題として、▽緊急コメ対策の実施要請(供給過剰米の市場分離、生産調整にまじめに取り組む農家への支援と実施しない農家への指導の厳格化など国の対抗措置)▽集落営農組織支援対策の拡充(県単独事業による総合所得対策の構築)▽飼料用米生産拡大への支援▽園芸作物生産振興対策への支援―など10項目が示された。
県議側からは「まじめに転作を実行した人にメリットが出るような仕組みをどうつくっていくかが課題」「国の農政の根幹で転換が必要。所得保障が必要」「コメ中心から施設園芸にどう切り替えていくかが大きな課題」「農外収入で頼りとしてきた公共事業が減っている。増やす手立ても重要」「土地利用型農業は行政の関与なしにできず、日本は農業を残すかどうかという選択を迫られている」といった意見が出た。
これに対し、農協側からは、「食料自給率の向上は国の農政の根幹だったはず。水田農業を国家的プロジェクトとしてきちっと位置づけて」「(全国的にも総額では低額な)県の農林水産予算をもっと増やして」「農業の振興計画は県も一緒になって作っているのだから、県議会でもチェックし、一緒に動かしていく仕組みであるべき」「(外食産業に回っている懸念が指摘されている)加工用米の販売実態、主食に回っている懸念があるくず米の流通を国がきちんと調査すべき」などの意見が出た。
閉会のあいさつで庄内農業協同組合経営者協議会の阿部会長は「庄内農業に暗雲が立ち込め始めたと言われて久しいが、今は死に体になりつつある。庄内の水田農業の再生をどう考えるかが重要」と結んだ。