2009年(平成21年) 8月19日(水)付紙面より
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酒田市観光物産館「山居倉庫―酒田・夢の倶楽」で、開館5周年記念特別企画「辻村寿三郎人形展」が開かれ、訪れた人を美しくも妖(あや)しい「辻村ワールド」に引き込んでいる。
明治時代から続く現役の米倉庫・山居倉庫12棟のうち2棟を改装して2004年4月にオープンした夢の倶楽では、「ミュージアム華の館」のギャラリーで、「さかたの雛(ひな)遊び」や「京の舞妓」など辻村作品を常設展示している。特別企画は通常展示に加え、辻村さんの新作などを加えて毎年開催。好評を博している。
今回は新たな試みとして、展示作品の一部を前半の第1部(8月25日まで)と後半の第2部(8月26日―10月4日)で展示替えする。
開催中の第1部では、大日如来を中心にした五智(ごち)如来や薬師如来、愛染明王など仏像作品、「吉原」シリーズから「太夫」や「遊女」、「南北五人女」シリーズなど代表的な作品をはじめ、辻村さんが制作し俳優の平幹二朗さんが舞台劇「王女メディア」で着用した豪華な衣装、新作の「平成の娘たち」シリーズや「猫の王子」「猫の貴婦人」など常設展示を含めて約80体の人形が並び、その独特の作風で訪れた人を魅了している。26日からの第2部では、上田秋成原作「雨月物語」のうち「白峰」から西行法師、崇徳上皇ら登場人物と、待賢門院や鎮西八郎為義ら後の平家動乱の人物など新作13点を展示する。
また、今月29日午後3時からと30日の午前11時、午後2時からの計3回、辻村さんのギャラリートーク&サイン会を開催する。参加には「華の館」ギャラリーの観覧料(一般500円、高校・大学生400円、小・中学生300円)が必要。問い合わせは酒田夢の倶楽=電0234(22)1223=へ。
特別展示されている作品のうち「吉原」より「遊女」(右端)や「太夫」(右から4体目)など
2009年(平成21年) 8月19日(水)付紙面より
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鶴岡市は9月1日から、同市櫛引地域出身で名誉市民の彫刻家・富樫実さん(京都府在住)の作品「空(くう)にかける階段」の貸し出し事業をスタートさせる。貸し出すのは富樫さんから寄贈され同市が所蔵する作品のうち130点。対象は市内の小中学校や公共的施設のほか、金融機関やホテルのロビー、福祉施設など多くの市民が集まり鑑賞できる場所。同市で申し込みを受け付けている。
富樫さんは1931年、旧櫛引町桂荒俣生まれ。庄内農学校(現庄内農業高)卒業後、佐久間白雲(高村光雲の孫弟子)の下で仏像彫刻を学ぶ。山添高に入り直し、京都市立美術大(現京都市立芸術大)彫刻科卒。その後、フランス政府給費留学で国立パリ美術学校に学び、67年、同政府賀状コンクールで大賞に輝く。93年に京都府文化功労賞、96年に京都美術文化賞・京都市文化功労者表彰を受賞するなど、日本を代表する彫刻家として国内外で活躍している。成安造形大(滋賀県大津市)名誉教授。
富樫さんの作品のタイトルはすべて「空にかける階段」。64年から制作を開始し、直線と曲線を厳しく突き詰め、存在する空間と見る側の創造力によって作品が表現する美しさを進化させている。作品は庄内空港や同市美咲町、櫛引地域など市内各所にモニュメントとして設置されている。
今回の貸し出しは、より多くの市民に富樫さんの作品の芸術性を伝えようと実施する。昨年11月に寄贈された100点と、櫛引町当時に贈られた70点のうち30点の計130点。作品はケヤキなどの木製、御影石などの石製が中心。貸し出しは無料。期間は原則1年間だが更新も可能。
貸し出しを前に今月7日には櫛引公民館に全作品130点を展示し、市内の小中学校長らを対象にした内覧会を行ったほか、8日から4日間は市民向けの特別公開も実施。すでに小中学校5校、商工会や老人施設など4団体から作品借り受けの申し込みがあるという。
担当の櫛引庁舎総務課では「貸し出し事業は富樫さんの希望でもある。直線と曲線が紡ぎ出す芸術を間近で体感してもらえれば」と話している。問い合わせは同課=電0235(57)2111=へ。
9月から貸し出し事業が始まる富樫さんの彫刻作品=今月8日から11日まで行われた特別公開