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荘内日報ニュース


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2010年(平成22年) 4月13日(火)付紙面より

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森の時間27 ―山形大学農学部からみなさんへ―

森の残酷物語パート1
兄弟のバトルロワイヤル 小山 浩正

 坂本龍馬は京都であぶれた浪士団を蝦夷地開拓に派遣しました。その中には龍馬のおいもいて、画家の坂本直行はこの人の孫だそうです。六花亭という銘菓の包装紙に描かれたハマナスが最もポピュラーだと思いますが、私のお気に入りは赤い実をしたナナカマド。学生時代にはじめてスケッチしたのがこの樹で、それだけに画家の描くお手本が脳裏に深く刻印されています。

 農学部の敷地にも何本かあり、毎年、真っ赤な実を着けます。その前を通るたびに、立ち止まってはしばし眺めるのが常ですが、ある時、その実をつまんで手のひらで転がしてみました。こうなると商売柄、どうしてもつぶして中を見たくなる。こじ開けると中からタネ(種子)が3粒出てきました。「ふ?ん、ナナカマドは実はタネが3つか」と思いながら、おもむろに次の実も手が伸びます。すると、こっちには1粒しかありません。「あれ?」、おのずとその次も試す。今度は5粒…。

 これで研究魂に火がつきました。600個ほど実験室に持ち帰り、ことごとくタネを取り出すと、最少で1個、最多で6個とその数はまちまちだったのです。どうして、こんなことが起こるのか。1粒ずつの大きさを測ると、6個も詰まっていた場合のタネはどれもみな小さく、逆に1つしかない時のタネが一番大きいことが分かりました。これは、母樹からの栄養をタネどうしで奪い合っていたことを意味しています。巣の中のひな鳥は、親鳥が運んできた餌をめぐって激しく争います。子猫が母猫の乳を取り合うかわいいしぐさも本人たちは必死です。これと同じことが植物にも起きているのです。ナナカマドの実には、はじめ10個のタネの基(胚珠)がありますが、激しい兄弟げんかの末に一人勝ちしたら栄養を独り占めして大きく育ちます。逆に、互いの力量が等しければ、みんなで分け合って生き残るかわりに個々は小さくならざるをえません。よく見るとタネが1つしか残っていない実には、争いに敗れて殻だけになった胚珠の残骸が見つかります。強者どもの夢のあと。果実という小さな世界で、骨肉の争いが起きていたのです。

 旧約聖書に登場するアダムとイブの長兄カインは嫉妬(しっと)がもとで弟のアベルを殺害します。これにちなんで生態学では兄弟殺しの現象を「カイニズム」と呼びます。わざわざ呼び名があるほどに生物界では普遍的ということです。血を分けた兄弟で争うなんて残酷すぎる。でも本当に怖いのは、その背後で彼らのバトルを演出しているのがほかならぬ母親だという事実。強い子を選ぶため、どれが最後まで残るのか、それを母が黙って眺めていると思うと怖くてたまりません。自然は、ただ賛美するだけでは済まされない残忍さも持っています。それも直視してはじめて彼らの世界に肉迫できるのでしょう。

 ところで、龍馬には権平という兄がいます。この2人の名前、同じ親から出たセンスと思えません。維新の立て役者が「坂本権平」だったらガックリなので、逆じゃなくて良かったと言えばそうですが、なぜ弟に匹敵する格好良い名を考えてあげなかったのか、親の気持ちをはかりかねるのです。

(山形大学農学部教授、専門はブナ林をはじめとする生態学)

赤い実をつけたナナカマド 鳥海山/鉾立にて=自然写真家・斎藤政広(2009年10月5日撮影)
赤い実をつけたナナカマド 鳥海山/鉾立にて=自然写真家・斎藤政広(2009年10月5日撮影)


2010年(平成22年) 4月13日(火)付紙面より

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ぼくらファイアーマン 鶴岡で楽しく消防体験

 火災予防の大切さや消防活動の仕組みなどを学ぶ「消防ふれあい広場」が10日、鶴岡市小真木原公園の北広場で開かれ、家族連れがはしご車の乗車や消火器の放水を体験した。

 「春の火災予防運動」(今年は4月9―22日)の行事の1つとして、鶴岡市消防本部が毎年実施している。今回は、来年5月31日までにすべての住宅に設置が義務付けられている住宅用火災警報器の啓発コーナーを中心に、はしご車の乗車やポンプ車からの放水、消火器の取り扱いなど各種体験コーナーが設けられた。

 このうち、はしご車の乗車体験は親子連れの人気を呼び、長い行列ができた。はしごが高さ約30メートルまで伸びると、乗り込んだ子供たちは恐る恐る地上をのぞき込んでいた。このほか、「住宅用火災警報器は消防署で購入できるか」などの○×クイズ、消防音楽隊の演奏なども行われた。

 親子でふれあい広場を訪れた鶴岡市の会社員男性(39)は「火災警報装置はすでに設置している。今後は地震の警報装置や防災セットの購入も考え、非常時に対応するようにしたい」と話していた。

防火服やヘルメットを装着した「ミニ消防士」がポンプ車からの放水を体験した
防火服やヘルメットを装着した「ミニ消防士」がポンプ車からの放水を体験した


2010年(平成22年) 4月13日(火)付紙面より

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「清河八郎」の魅力探る 生誕180年記念シンポ開催

 明治維新の先駆けとなった庄内出身の志士・清河八郎(1830―63年)の生誕180年記念シンポジウムが11日、庄内町の清川公民館で開かれた。大勢の歴史ファンが出席し、記念講演やパネルディスカッションを通して“回天の士”の生涯をなぞった。

 シンポジウムは、まちづくりグループ「元気・まちネット」(矢口正武代表、事務局・東京都墨田区)が、地元の清河八郎顕彰会(齋藤清会長)、立谷沢川流域振興プロジェクト協議会(遠藤仁会長)と連携して企画。八郎が生まれた当時の庄内や、八郎が目指したものについて多角的な視点から考察し、古里の再発見につなげていこうというもの。

 この日は午後1時に開幕し、オープニングで元気・まちネットの矢口代表が「魅力あふれる清河八郎という人物を知り、彼が正当な評価を受けられるよう働き掛けていきたい」とあいさつした。

 続いて、藤沢周平・司馬遼太郎文学研究会(山形市)代表の佐竹迪さんが「藤沢周平作品『回天の門』―郷土が生んだ清河八郎の生涯」と題して基調講演。八郎の思想に大きな影響を与えたとされる桜田門外の変について「大老暗殺は幕政への不満が爆発したというよりも、幕府の弾圧で尊皇攘夷の志士たちが深刻な危機と恐怖を抱いたため、起こった事件ではないか」と話し、「名もない志士の行動が天下を動かしたことで、八郎は『回天の時は来た』と考えただろう」と解説した。

 このほか、八郎が18歳で清川村から上山まで歩いた街道を「回天の道」と名付け、昨年9月に踏査・検証した元気・まちネットの取り組みを矢口代表が解説。佐竹さんや矢口代表、清河八郎記念館常任理事の廣田幸記さんをパネラーに、パネルディスカッションなども行われた。

 シンポジウムに先立ち、八郎生誕180年の今年から没後150年の2012年までの3年間に清河八郎顕彰会が取り組む各顕彰事業の開幕式典が行われ、同会が製作した顕彰事業のPR看板がお披露目された。看板は清川地区の清河八郎記念館に設置される。

清河八郎顕彰会が取り組む各顕彰事業のPR看板がお披露目された
清河八郎顕彰会が取り組む各顕彰事業のPR看板がお披露目された



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