2010年(平成22年) 6月22日(火)付紙面より
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鶴岡市ゆかりの女流詩人・茨木のり子さん(1926―2006年)の詩にメロディーを付けた歌曲を披露するコンサートが20日、鶴岡市中央公民館で開かれた。同市ゆかりのメゾソプラノ歌手・保多由子さん(東京都多摩市在住)が豊かな表現力で茨木さんの世界を歌い上げ、大勢の観客を魅了した。
コンサートは、茨木さんの詩を全国へ発信しようと取り組んでいる「茨木のり子六月の会」(黒羽根洋司代表)の主催。同会はこれまで隔月での会報発行や講演会、朗読会などを開催しており、コンサートは今回が初めて。
小学4年から鶴岡南高校を卒業するまで鶴岡市に住んでいた保多さんが昨夏、同校の創立記念式典で、茨木さんの詩に曲を付けた歌を披露したことがきっかけとなり、今回のコンサートが企画された。
この日は約450人の聴衆が会場を埋め満席となった。コンサートは2部構成で、第1部はいずれも茨木さんの詩を歌にした「一人は賑(にぎ)やか」「こどもたち」で幕開け。女性らしい繊細で素直な感情が込められた詩を、保多さんがそのまま歌で表現した。このほか、サティ「あなたがほしいの」などシャンソンの名曲を披露した。
第2部は、保多さんと親交のある作曲家・寺嶋陸也さんが作曲した茨木さんの詩による歌曲集「道しるべ」から、「自分の感受性くらい」「十二月のうた」など7曲すべてがお披露目された。いずれもコンサートで歌われるのは初めてで、作曲家委嘱の歌曲集が地方で初演されるのは珍しいという。
寺嶋さんのピアノ演奏を背に、気持ちを込めて歌い上げる保多さんに聴衆から大きな拍手が惜しみなく送られていた。
幕あいには黒羽根代表が寺嶋さんに茨木さんの魅力などをインタビューし、寺嶋さんは「詩の内容が身近な物事を題材にし、分かりやすい言葉で表現していてとても共感できる」と話していた。