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2013年(平成25年) 3月27日(水)付紙面より

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消え行く「アバ」の姿 田川地方行商協同組合 今月で解散

 リヤカーを引いて魚を売り歩く行商の女性「アバ」たちが立ち上げた田川地方行商協同組合(五十嵐義治理事長、鶴岡市末広町)が、今月いっぱいで役目を終え、解散する。設立当初、800人余りもいた組合員は現在わずか14人。高齢化が進んでおり、徒歩で行商している組合員は「解散を機に行商をやめる」と話している。戦後の混乱期、鶴岡市街地の魚食を支えてきたアバの姿は消え行くことになりそうだ。

 同組合の前身となる田川地方商業自治会連合会は1951(昭和26)年7月に設立された。組織化の目的は、当時大勢いたアバたちが利用する早朝列車のマナー改善と秩序づくりが背景にあったとされる。58(昭和33)年には鶴岡市末広町(現在のマリカ駐車場付近)に、田川地方行商協同組合の事務所兼荷さばき所が完成(84年に現在地へ移転)。多くの組合員が同所を拠点にして買い付けや休息の場としていた。

 近年は組合員の高齢化に伴い2008年に21人、現在は14人まで減少した。五十嵐理事長によると「組合員が極端に減少し始めたのは平成に入ってから。大型スーパーや流通面の発展が理由に挙げられる」という。組合員の大幅な減少により組織の運営自体が厳しい状況となり、2010年1月には12年中に組合の解散と荷さばき所の建物、土地を売却することが決まった。しかし、「もう少し行商を続けたい」という組合員の強い要望で解散をこれまで先延ばしにしていた。

 組合の解散まで間もない26日の午前4時半すぎ、由良地区のアバ4人が荷さばき所に姿を見せた。間もなく鮮魚や青果物などの仲買人が到着し、アバたちはそれぞれマスやアカウオ、メイカ、塩ホッケなどの鮮魚や野菜、果物、塩辛やつくだ煮などの加工品を買い付けた。建物の引き渡し期間が迫りテーブルや椅子が持ち出された後、がらんとした雰囲気の荷さばき所を見渡して「広くなったのー」「ここがなくなるとおしゃべりもできねのー」とつぶやくアバもいた。

 22歳の時から60年近くリヤカーを引き魚を売り続けてきた齋藤みつ子さん(80)=鶴岡市由良=は、買い付けた商品とともに組合員が運転する車に乗り込み、午前6時半ごろから同市羽黒町黒瀬地区を回った。リヤカーは毎日、同地区で借りている。

 齋藤さんが鮮魚や青果物などをリヤカーに積んでいると、近くに住む常連が姿を見せ「今日は何がいいや」と会話しながらアカウオなどを購入した。70代の主婦は「(齋藤さんとは)何十年もの付き合い。量販店などでも魚は買えるが鮮度が全然違う。親類に送ると喜ばれるので、行商をやめてしまうのは残念で仕方がない」とため息をついた。

 齋藤さんは「市街地を回っている他のアバたちも80代前後で、みんな年を取った。家から市街地まで車で往復するのもお金が掛かる。保健所の認可が厳しくなったため新しくアバになる人もいない。組合の解散を機に、徒歩組はみんな行商をやめることになりそうだ」と淡々と語った。昼ごろまでリヤカーを引いて黒瀬地区の得意先を何十軒と回るという。

 五十嵐理事長は「現役の組合員は流通が発達していなかったころから長い間、地魚を地域に提供してくれた。本当にご苦労さまと言いたい。これまで利用してくれた方たちにも感謝したい」と話した。

リヤカーに商品を積む間、近くの住民が買い物に足を運ぶ。こうした風景は間もなく失われる=26日、鶴岡市羽黒町黒瀬地区
リヤカーに商品を積む間、近くの住民が買い物に足を運ぶ。こうした風景は間もなく失われる=26日、鶴岡市羽黒町黒瀬地区



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