2014年(平成26年) 1月10日(金)付紙面より
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江戸時代、庄内藩が構えた大名屋敷の遺構が東京都千代田区大手町一丁目の再開発現場で見つかり、千代田区の教育委員会などによって調査が進められている。遺構からは石組みで造られた溝やかまどなどのほか、陶磁器の生活用品などが出土し、当時の大名の暮らしぶりを知る史料になると期待が高まっている。
千代田区教委によると、遺構が見つかったのは同町神田橋そばの再開発現場。発見された大名屋敷の遺構は庄内藩上屋敷で、藩主や家臣が住んでいたとされる。1715年に建てられたとみられ、明治時代に取り壊され、当時の大蔵省の紙幣寮が建てられていたという。広さは約9500坪(約3万1000平方メートル)。
遺構は日本政策投資銀行跡地の再開発現場で見つかった。発掘調査は昨年8月から1カ月半ほどかけて行われ、調査終了後、既に埋め戻されている。発掘によって茶わんやとっくりなどの生活用品や石組みの排水溝などが出土した。また当時の江戸では何度も大火が発生しており、火災から財産を守るための地下室のほか、火災で焼けたとみられる生活用品や酒井家の家紋瓦も見つかった。
今後は礎石の配置などを文献調査などで明確にし、当時の屋敷割り、藩主や藩士の生活の分析などを進めていく。千代田区教委は鶴岡市の郷土資料館などに協力を依頼し、「今後資料などを活用しながら出土品の展示や保存についてどうしていくか考える」とし、8月ごろまでに調査結果をまとめる予定。
鶴岡市の致道博物館の館長を務める酒井家18代当主の酒井忠久さんは「江戸藩邸は大使館のような役割だったのでは」として「出土品から当時の大名屋敷での暮らしぶりが分かってくると思う。非常に興味深く、今後の調査結果に期待している」と話している。