2016年(平成28年) 4月2日(土)付紙面より
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鶴岡市の海岸線、堅苔沢地区一帯で、在来種のナスが栽培されていることが分かった。「波渡(はと)ナス」と呼ばれ自家用に栽培・採取し市場には流通していないが、加賀野菜の「へた紫ナス」に似た丸みのある大型のナス。在来作物に詳しい山形大農学部の江頭宏昌教授も在来作物として確認した。地元の小堅保育園(土岐邦子園長、園児22人)では今年、地域の在来作物の栽培に取り組むことにし、「人肌で種を温めてから種をまく」という言い伝え通り、園児が種の芽出しからチャレンジしている。
波渡ナスが“発見”されたのは昨年9月ごろ。同保育園の食育活動に協力している同市在住の食育インストラクター、海藤道子さんが地域の方に「おらい(家)のナスうめさげ」と提供を受けたのがきっかけ。独特の形のナスに興味を持ち地域で話を聞くと、「波渡ナス」と呼ばれ各家庭で自家用に栽培し、種も毎年採取していることが分かり、江頭教授に確認してもらい在来作物と分かった。
丸みのある大型のナスで、実がぎっしりと詰まり味もおいしいという。堅苔沢地区の約120戸のうち10戸ほどで栽培しているとみられ、ほとんどが自家消費されてきた。江頭教授は「ルーツはDNAなどを研究してみないと分からないが、鶴岡市内の在来作物はたいてい調べ尽くしたと思っていたのにまだあったことに驚いた」と話す。
海と山に近く体験活動に力を入れている同保育園では今年、年長児を中心に波渡ナスの栽培に挑戦しようと、地域で栽培しているお年寄りを招いて3月31日に初めて顔合わせ。「(種は)懐さ抱いて寝るんだと聞いた」「おらいではきんな(昨日)種まいた」などと話を聞きながら、年長児は数日前に自分たちで手縫いしたポシェットに土にまぶした種を数粒ずつ入れてもらい、人肌となるよう肌着の中にしまい込んだ。
数日かけて芽が出るのを待ち、土に植えて苗を育て、園庭に植える予定。土岐園長は「地域のお年寄りたちの話を聞きながらまずはやってみたい。そうした活動で子どもたちが在来作物に興味を持ち、小堅小学校が閉校してしまった中で地域と子どもたちの交流の場にしていきたい」と話している。