2017年(平成29年) 8月23日(水)付紙面より
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公益財団法人「庄内能楽館」(酒田市浜松町、池田宏理事長)主催の「初心者の為の能楽入門講座」(酒田市教育委員会、荘内日報社、マリーン5清水屋など後援)が21日、法人が運営する浜松町の庄内能楽館で開かれた。能楽・宝生流第20代宗家の宝生和英さんらが能「船弁慶」を演じたほか、同法人が取り組んでいる仕舞教室などの受講生が日頃の練習の成果を披露した。
庄内能楽館は1976年、池田理事長の母で能楽に造詣が深かった康子さんが設置。能舞台はひのき造りでくぎを使用していない。舞台の下にはかめが入っており、踏み鳴らしたときに音が響くようになっている。
桟敷席も含め約150人を収容。竣工(しゅんこう)以来、能楽師や団体による公演、仕舞や囃子、謡曲の愛好家の活動を支えるなどしてきたが、康子さんの病気などで十数年間はほぼ休止状態に。2014年に公益財団法人に移行したことを受け、池田理事長が再開を決定し以来、仕舞・謡曲、太鼓・笛などの教室を実施している。
今回の講座は、子どもたちから日本の伝統文化に触れてもらおうと再開以来、毎年開催している「夏休み親子仕舞教室」の発表会を兼ね、能楽の魅力をより多くの人から知ってもらおうと、和英さんらの協力で同能楽館が企画した。
この日は2部構成で行われ、第1部では仕舞教室の受講生約30人がこの夏の成果を披露。終了後は和英さんが一人一人に修了証を手渡し、「続けてきた人は後輩に負けないよう、初めての人は先輩に追い付くよう、これからもみんなで楽しく能を続けて」と激励した。
仕舞教室講師を務める能楽師、辰巳大二郎さんらが能について解説した後、第2部では、静御前との別れ、そして九州に向けて出発する源義経と弁慶の前に立ちはだかる平家の「怨霊」を描いた「船弁慶」。静御前と平知盛を和英さんが務めたほか、母親の実家がある鶴岡市に帰省し仕舞教室を受講した出雲路聖君(11)=千葉県浦安市立富岡小6年=が子方として共演、義経を演じた。和英さんの美しい舞い姿に、参加した100人余の能楽ファンは時がたつのを忘れるかのように見入っていた。出雲路君は「小学3年の時から毎年、受講しており今年で4年目。能は楽しい」と話していた。