2017年(平成29年) 9月21日(木)付紙面より
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老朽化し居住困難となった空き家と土地を所有者から無償で寄付を受け、解体・整地後に若者世帯や移住希望者に住宅用地として供給する鶴岡市の「市中心市街地居住促進事業」で、初の宅地購入者が決まった。
第1号の購入者は宮城県内在住の移住希望者。こうした事業は県内市町村では初の取り組みで、市は「人口減少と高齢化が進む中心市街地への居住促進につなげたい」と話している。
市は2013年4月に空き家の適正管理と有効活用を目的にした空き家管理条例を施行。NPO法人「つるおかランド・バンク」と連携した空き家・空き地対策を進めている。
そうした中で、経済的な理由から所有者が空き家の解体に踏み切れないケースが見られ、市は、寄付を受けた危険な不良住宅を解体・整地し、土地の有効活用を促進する一環で、14年度から市街地居住促進事業に乗り出した。
事業は人口減少や高齢化が進む馬場町や家中新町、神明町、宝町、新海町など市の中心市街地活性化基本計画に定めた区域と近接する区域の計24町を対象区域に指定。寄付を受ける物件については▽木造または軽量鉄骨造の建築物▽建物と土地に賃借権が設定されていない▽所有者が市税を完納―など7項目の条件があり、市が現地調査して不良住宅と判定した後、解体・整地する。
市は空き家対策モデル事業として取り組んでおり、県すまい・まちづくり公社の「まちの再生支援事業」と連携して実施。一部に国の補助金を活用し、16年度までに計5棟を解体している。土地は事業目的を人口減少対策の一つに位置づけており、若者世帯や子育て世帯、市外からの移住希望者に限定して販売する。住宅建築には県や市の補助金を活用できる。
第1号として分譲契約がまとまったのは、15年度に解体した同市本町三丁目の約145平方メートルの土地。市によると、市内の人が所有していたが、少なくとも25年以上空き家となっており、老朽化がかなり進んでいた。購入した宮城県内の人は家族で移住し、新居を建て来春には引っ越す予定という。
この空き家のケースでは解体と整地に約200万円の費用がかかったという。市は分譲価格を公表していないが、「要した費用をまかなえる程度の価格」としている。
市都市計画課は「事業の実施で長年使用されない危険な空き家を解消するとともに、中心市街地の土地利用を促進して中心市街地の居住人口の増加につなげ、中心部の人口減少と高齢化に歯止めをかけていきたい」とし、事業の継続を予定。県すまい・まちづくり公社は「まちの再生支援として他の市町村にも広げていきたい」としている。