2017年(平成29年) 11月7日(火)付紙面より
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卓越した技能を持つ人を表彰する本年度の「現代の名工」に、鶴岡市東原町の「番匠 剱持工務店」棟梁で建築大工の剱持猛雄さん(71)が選ばれた。剱持さんは「うれしいが、こんな人間がそんな賞をもらっていいのか」とはにかみながら喜びを語った。
「現代の名工」は卓越した技術を持ちその道で第一人者とされる技能者を表彰するもので、1967年の創設以来、厚生労働大臣が毎年1回広く社会一般に技能尊重の機運を浸透させることなどを目的に表彰状を授与している。本年度の受賞者は全国で149人。県内では剱持さんと高橋良人さん(61)=婦人・子供服仕立職、天童市=の2人。
剱持さんは建築大工の職人として日本古来の伝統構法の建築技術を研究・実践し、多くの文化財建造物や一般住宅などを手掛けてきた。また、弟子を受け入れるほか、全国各地で講演や実演を行うなど後進指導・育成にも貢献している。
鶴岡工業高校定時制課程建築学科を卒業。東京の建設会社に勤務後、進学を希望して退職。帰省し両親に相談したが、大工の仕事を勧められて職人の世界に足を踏み入れた。72年に「番匠 剱持工務店」を設立。これまで一般住宅のほか、鶴岡市の重要文化財渋谷家住宅曳家工事や飯豊町の県文化財天養寺観音堂保存修理工事など文化財建造物、三川町立東郷小学校新築工事などを手掛けてきた。さらにNPO法人伝統木構造の会(本部・東京都)の大工会幹事長・理事として全国各地で講演・実演を行っている。2015年に市卓越技能者表彰、16年に国土交通省の建設マスターを受賞した。
剱持さんは「私は名工ではない。一介の大工で、普通の家を建ててきただけ。大工にとって一般の住宅が第一だと思っている」と話す。地元の無垢(むく)材を使い、できるだけ金物を使わない伝統的な家造りにこだわっている。「木には個性があり、一本一本曲がり方に違いがある。それをどう組むかが腕の見せどころ」とする。また、これまで十数人の弟子を住み込みで育ててきた。弟子の中には長男もいて、現在は親子二人三脚で伝統木構造にこだわる。「弟子の住み込みでは妻が一番大変だったのでは。口では伝えられないが感謝している。空気のような存在」と笑う。
剱持さんは「ただただやみくもに働いてきただけ。これからもがむしゃらに働き続ける。弟子とかでなく、若手の育成にも力を入れたい」と抱負を語った。
表彰式は都内で6日に行われた。