2017年(平成29年) 12月21日(木)付紙面より
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鶴岡市の高館山(標高約273メートル)を隔てて日本海側の加茂地区と内陸側の大山地区を結び、江戸時代ごろに物流の要所として使われた「加茂坂峠古道」と、江戸後期に開削された「加茂坂峠新道」のルートが、市民有志による調査でほぼ明らかになった。
市自然学習交流館「ほとりあ」のサークル活動の一環で、地元住民などで2013年に結成した「高館山周辺の歴史と文化を知る会」(後藤義治会長、メンバー8人)が今年9月、「今、よみがえる加茂坂峠古道」として報告書をまとめ、自費出版した。
加茂坂峠古道は江戸時代初めごろの整備とされ、商業港として栄えていた加茂港と内陸を結ぶ物流の要所を担った。その後、湯殿山行者の鉄門海上人(1759―1829年)の志願で、加茂坂峠新道が1812年までに完成。さらに、県の事業で86年加茂隧道(ずいどう)が仮開通。1939(昭和14)年には拡張工事により隧道の自動車通行が可能に。現在は2003年に完成した加茂坂バイパス・新トンネルが往来を支える。
加茂と大山を結ぶ峠道は、高館山周辺に幾筋もあったとされ、現在でも無数に痕跡が確認でき、このうちの古道と新道のルートの詳細はこれまで謎に包まれていた。
同知る会は約3年をかけ、地形や文献を調査。関連文献をあらためて調べる上で「大泉叢誌84」(致道博物館蔵)に有力な記述を発見。工事中の加茂坂峠新道を見物した際の記録で、新道と古道の各位置関係に言及していた。これまで見つかっていた絵地図と照らし合わせ、現地でも痕跡を確認した。
加茂小と大山小の統合で今年春誕生した新・大山小では、同知る会のメンバーで元加茂小校長の升川繁敏さん(62)が非常勤講師を務めていたこともあり、6年生63人が、4月から「加茂と大山をつなぐ道」をテーマに総合学習に取り組んだ。両地区の子どもたちが調べ学習や10月には劇で学習成果を発表。11月30日の古道の登山で締めくくった。加茂と大山の古来のつながりに理解を深めている。
報告書を販売
「今、よみがえる加茂坂峠古道」は、A4判46ペイジ。1部1500円(税抜き)。初版で500部印刷し、増版も予定。「ほとりあ」や昭文堂書店(同市大山二丁目)、阿部久書店(同市山王町)で扱う。問い合わせは同知る会事務局の石川さん=電090(4452)2108=へ。