2018年(平成30年) 5月26日(土)付紙面より
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戦後の日本が生んだ傑作カクテルといわれる「雪国」。その創作者である井山計一さん(92)=喫茶「ケルン」マスター、酒田市中町二丁目=の半生に光を当てたドキュメンタリー映画「YUKIGUNI」が完成し24日、同市の希望ホールで先行上映会が開かれた。
井山さんは1926年、酒田市生まれ。ダンス教師を経て、27歳の時に仙台市にバーテンダー修業に行き転身。59年、壽屋(現サントリー)主催の全日本ホーム・カクテル・コンクールに「雪国」を出品してグランプリを獲得。今もケルンで現役のバーテンダーとしてシェーカーを振り続けている。
映画の監督を務めたのは鶴岡市在住の映像作家・渡辺智史さん(37)。2011年に知人に勧められてケルンに行き、井山さんに出会った。スタンダードカクテルの創作者が現役でバーテンダーとして働いていることに感銘を受け、夜の酒場の文化とともに記録に残したいと思い立ったという。15年11月から今年3月まで井山さんや家族、県外のバーテンダーらに取材し、1時間27分の映像作品にまとめた。
内容は、井山さんの半生を振り返りながら「雪国」誕生の経緯やその魅力、家族の絆、大火や空洞化など酒田のまちの移り変わりを描いた。全編にわたり背景音楽にスタンダードジャズを取り入れ、ロマンチックな雰囲気の中に普遍的なテーマをちりばめた。ナレーションは俳優の小林薫さん。
上映後、井山さんは「雪国は、多い日は50杯ほど作る。これを飲みに大勢の人に来てもらえるのはうれしい。映画になり、大好きな酒田のことを多少なりとも発信できたら」と話した。
渡辺さんは「時代を経ても古びないもの、変わらないものを描きたかった。一つの仕事を続け、大切な人をいとおしく思い、老いていく。そんなことの中にヒントがあるような気がする」と話した。
先行上映会は6月23日(土)に酒田市の希望ホール(午前10時半、午後1時半、同7時の3回)、同24日(日)に同市総合文化センター(午前10時半、午後1時半の2回)でも行われる。料金は前売り1200円、当日は1700円。ケルンや八文字屋ヱビスヤ店(鶴岡市)などで扱っている。今秋からは首都圏を皮切りに全国の劇場などでも公開予定。問い合わせはいでは堂=電0235(24)8387=へ。