2018年(平成30年) 6月5日(火)付紙面より
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酒田市出身の世界的なテノール歌手で同市名誉市民の市原多朗さん(68)=東京都、東京藝術大客員教授=による若手声楽家への公開レッスンが2日、同市の希望ホールで行われ、世界の聴衆を魅了した技と心を伝授した。3日には同会場でこの若手声楽家がコンサートを開き、レッスンの成果を披露した。
酒田市は今年3月、芸術文化の振興を魅力あるまちづくりにつなげようと、市文化芸術基本条例、市文化芸術推進計画を制定・策定した。今回はそれに基づき、市などが主催する酒田希望音楽祭の目玉事業の一つ「市原多朗マスターコース」として実施した。
訪れた若手声楽家は、いずれもプロとして活躍している藤谷佳奈枝さん(ソプラノ)、金城理沙子さん(同)、山下裕賀さん(メゾソプラノ)、澤原行正さん(テノール)、喜納響さん(同)、山田大智さん(バリトン)の6人。5月31日から2日まで市原さんのレッスンを受け、3日に「希望の船出コンサート」を開いた。
このうち2日の公開レッスンは老若男女約110人が聴いた。若手声楽家が1人30分程度ずつ、翌日に歌うオペラのアリアを中心に習った。市原さんは「歌は農業に似ている。土地を耕し、種をまくなどさまざまな段階を経て収穫に至る」「はとバスに乗った時、ガイドの歌が下手だった理由を考え、簡単にうまく聞こえる方法に気付いた。歌いだしに前の拍を感じて歌うと、心がこもって聞こえる」など、自らの体験を交え、聴衆にも音楽の魅力や奥深さを軽妙に語りながら進めた。
また、レッスン冒頭には、澤原さんと喜納さんの二人が“歌の決闘”として、翌日のコンサートで歌う権利を賭け、ドニゼッティの歌劇「ランメルモールのルチア」の同じアリアを歌った。聴衆の投票で喜納さんが歌う権利を獲得。2人の後、市原さんが同じ曲の一節を歌うと、圧倒的な声量と情感に、聴衆は引き込まれるように聴き入り、「やっぱりすごい」など大きな声援と拍手を送った。
市は市原さんと若手声楽家との交流を今後も継続する方針。今回の関連経費は来年3月31日まで220万円を目標に、ふるさと納税制度を使って寄付を募るガバメント・クラウドファンディングで賄う。お礼の品は希望ホール大ホールの利用権(寄付額100万円)から同市産の米7キロ(同1万円)、メロン(同)などさまざま。詳細は実施サイト「ふるまる」へ。