2018年(平成30年) 12月12日(水)付紙面より
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いずれも酒田市の「舞娘茶屋 相馬樓」(樓主・新田嘉一平田牧場グループ会長)と、酒田南高校(中原浩子校長)は10日、日本舞踊を中心とした伝統文化伝承、起業家精神を持つ人材の育成に関する協定を締結した。同校が2019年度、普通科教養探究コース内に「観光・地域創生専攻」を新設するのに合わせた締結で、観光事業という視点から地域を担う人材を育成していく。
観光による地域活性化は国を挙げて推進しているものの、東北地方は依然として出遅れているというのが現状。同校では「裾野の広い産業」とされる観光分野で、庄内地域、本県をより理解し世界に向けて発信することができる人材の発掘・育成に向け、「観光」「地域創生」に特化した「観光・地域創生専攻」を19年度に新設する。「子どもたちがこの地域をよく知って誇りを持つこと、素晴らしい地域文化を世界に発信することが目的」(中原校長)という。
今回の協定は、観光事業を通して少子高齢化・人口減少社会を生き抜き、地域を担っていく人材の育成を民間・学校が協働し取り組む産学連携。江戸―明治期に遠隔地交易の主役だった「北前船」の繁栄がもたらした酒田の商人・料亭文化の象徴、相馬樓を「実践教育」の場と捉え、生徒は礼儀作法、歴史・文化とともに、先見の明で平田牧場グループを起こした新田会長の起業家精神も学ぶ。
この日、相馬樓で行われた締結式には同社、同校から16人が出席。新田会長が「新専攻の開設おめでとうございます。今回の協定締結で、より効果的な教育を実践し優秀な人材の育成を図っていただきたい。酒田南高のさらなる発展を祈念する」、中原校長が「相馬樓の文化を学校に取り入れることができることは夢のよう。地域に貢献できる人材を育てたい。協力に心より感謝」とそれぞれあいさつ、協定書に署名・押印した。
終了後の会見で、新田会長は、25年前に相馬樓の前身、相馬屋を訪れた歌舞伎の故先代中村勘九郎(十八代目中村勘三郎)さんとのエピソードを紹介し、「伝統文化を残せない民族はいずれ滅びる。相馬樓、酒田舞娘(まいこ)という伝統文化を教育に生かしたいという酒田南高の思いに感激した」と話した。
2018年(平成30年) 12月12日(水)付紙面より
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藤沢周平さんの遺影に赤いバラを―。来年1月27日(日)に第20回開催を最後に幕を下ろす鶴岡出身の作家・藤沢周平さんをしのぶ会「寒梅忌」で、主催する鶴岡藤沢周平文学愛好会(萬年慶一代表)は、来場者全員に藤沢さんが好きだった赤いバラを献花してもらおうと企画している。同愛好会事務局の川井良三さんは「長く寒梅忌を支えてくれた会員、藤沢文学を愛する多くの人たちの手で遺影をバラで包んでもらいたい」と話している。
藤沢さんの長女でエッセイストの遠藤展子さんは自身の著書「父・藤沢周平との暮(くら)し」(新潮社)の中で、赤いバラのエピソードをつづっている。
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その日は朝から、病院の花屋さんが開くのを待って、父と母の結婚記念日のために、父の好きな赤い薔薇の花束を作ってもらいました。既に父の意識は遠のいていましたが、父と母と夫と私で、父母のお祝いをしました。
父は、母との約束どおり結婚記念日の一月二十六日まで頑張って、その日の夜、亡くなりました。父、六十九歳の冬でした。
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第20回寒梅忌は鶴岡市中央公民館市民ホールで午後1時開演。開演前の正午から開場し、受付で来場者にバラ一輪を手渡し、会場ロビーに設ける祭壇に献花してもらう。
第1部は同愛好会メンバーが「寒梅忌20年の歩み」と題して対談を行う。第2部は元NHKエグゼクティブアナウンサーで京都造形大教授の松平定知さんが、藤沢作品「蝉しぐれ」最終章を朗読するなど記念講演を行う。松平さんは16回寒梅忌でも講師を務めた。同会場談話室で寒梅忌に関わる絵画や切り絵、写真などの作品を展示する「絆展」も開催する。
入場無料だが、一般は入場整理券が必要。入場希望者は〒999―7548、鶴岡市みずほ12―5、鶴岡藤沢周平文学愛好会事務局に往復はがきで申し込む。締め切りは来年1月11日(必着)。応募定員は300人。問い合わせは同愛好会事務局の川井さん=電080(3333)7372=へ。
同愛好会は一般公開の顕彰事業として、藤沢さんの命日(1月26日)の直近の日曜日に寒梅忌を開催してきた。今後は季節の良い時期に新生「藤沢周平をしのぶ会」を立ち上げ、会員の交流を図る活動を主体としていくという。