2019年(平成31年) 1月31日(木)付紙面より
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鶴岡市のバイオベンチャー企業のSpiber(スパイバー、関山和秀代表執行役)が、高級毛織物のカシミヤをしのぐ風合いを持つ新素材の原毛を開発した。29日に製造工程とともに報道機関に公開した。保温などの機能性を含めカシミヤ以上の品質と低価格を実現する新素材で、既に国内外のアパレル企業から引き合いがあり、同社は2021年から量産化を目指す。
スパイバーは、クモの糸などの遺伝子情報を基に合成した構造タンパク質の素材開発を手掛ける。公開した新素材は、欧米の著名ブランドをはじめとするアパレル業界で、動物素材を使わない「アニマルフリー」や脱プラスチックなど環境負荷の少ない素材への関心の高まりを受け、3年前から開発を進めてきた。
素材の原料となるタンパク質は、独自に設計した遺伝子情報を微生物に組み込み、サトウキビやトウモロコシ、キャッサバなどを由来とする糖分が入った発酵槽で培養して作る。タンパク質を粉末状にしたものを特別な液体に溶かし、独自の技術で多様な繊維、樹脂などにする。
同社で開いた新素材の説明会で、関山代表執行役は「動物や石油に頼らない高品質で安価な素材へのニーズがあり、この原毛は新たな選択肢になる。従来のアパレル分野だけでなく、幅広い産業への活用が見込まれる」と語った。
タイに建設する大規模プラントで、21年から原料となるタンパク質の量産化に入り、素材の価格は「カシミヤの半分か、数分の1」(関山代表執行役)を目指す。少量であれば、タイでの量産化を前に市場投入も視野に入れ、本社製造施設の増設も計画する。原毛の新素材については、評判を聞き付けた国内外の2桁のアパレルメーカーから引き合いがあるという。