2019年(平成31年) 3月10日(日)付紙面より
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酒田市の酒田港外港地区大浜海岸にアミノ酸が溶出する特殊なコンクリートブロックを沈め、海藻の生育状況を調べているグループがこのほど、このブロックの藻場にハタハタが産卵しているのを初めて確認した。港内の砂地に人工的に藻場を造り、魚を育むという構想が現実味を帯びてきた。
このグループは、2017年3月に地元のダイバーや漁業者、酒田光陵高、加茂水産高、鶴岡工業高等専門学校、東北公益文科大、NPO関係者らで組織した「酒田港藻場づくりの会」=代表・佐藤一道セカンドリーフ社長(49)。佐藤代表らダイバーや漁業者が中心になって15年度から、特殊なコンクリートブロックを大浜海岸に沈め、人工的に藻場を造成する実証実験を行う中で、多様な主体が加わり、17年度からあらためて水産庁の助成や国土交通省東北地方整備局の支援を受け、実証実験を本格化させている。
ブロックは、アミノ酸が溶出する環境活性コンクリート製で、6個(1個4トン)を大浜沖約100メートルの離岸堤の内側に沈め、アカモクの母藻を植えた。その後、種が付きやすいようにブロック表面を削ったり、食害生物(ウニや小型の巻き貝)を除去するなど手入れを継続。その結果、アカモク以外にも大型、小型の多様な海藻類が増えてきたという。
ハタハタの産卵を確認したのは今月6日。離岸堤の内側で、南北に3個ずつまとめて沈めているブロックのうち、南側の3個について、佐藤代表らが潜って調べたところ、大型の藻にハタハタの卵塊(ブリコ)が計10個ほど付いているのを見つけた。大半のふ化は終わっていたが、中には卵の中にまだ稚魚がとどまっているものもあった。
佐藤代表は「今冬は回遊してきたハタハタの量が多く、やっとここを見つけてくれた感じでは。港内の砂地に人工的に藻場を造り、魚を育むという構想に、目に見える成果が出た形で、とてもうれしい」とする。
藻場づくりの会では、離岸堤の外側や、さらに北側の埋立護岸でも波消しブロックを清掃。さらに砂の流れと離岸堤の関係、漂着ごみの実態を調べるなど、幅広い試験研究を行っている。
佐藤代表は「環境活性コンクリートは普通のコンクリートより藻が増えやすいと感じている。さらに、漁業者や学生ら多くの人たちのつながりが、海の環境を良い方向に変えていけると実感。今後もこうしたつながりを大切にして活動を続け、港や地域の活性化につなげていきたい」と話す。
環境活性コンクリートのアミノ酸溶出は最長15年ほど続くという。今月中にも、埋立護岸にも設置する計画という。
2019年(平成31年) 3月10日(日)付紙面より
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庄内町の幼稚園と小中学校で8日、同町と友好町の宮城県南三陸町産ワカメと銀ザケを使った「南三陸町友好献立給食」が提供され、子どもたちが「おいしい」と笑顔で味わった。
旧立川町と旧歌津町が1999年、小学生の体験交流事業などをきっかけに友好町の盟約を締結。合併で庄内町と南三陸町となって以降、あらためて盟約を締結し災害時における相互応援協定も結んだ。
2011年の東日本大震災発生時、毎日のように庄内町から支援物資が届けられたことに「お礼がしたい」と、翌12年に南三陸町歌津漁協の漁業者がワカメを庄内町へ届けたことを機に庄内町PTA連合会が中心となって「わかめ交流事業」がスタート。毎年11月に庄内町の小中学生や保護者、教職員らが南三陸町を訪れワカメの種付けを教わるなど交流を続けている。南三陸町の海には庄内と書かれた浮きがあり、この下に伸びたワカメが毎年給食用に贈られている。
今年は、昨年の猛暑の影響で水温が下がらず11月に種付けしたワカメが全滅。それにもかかわらず同漁協の厚意でワカメが届けられた。今年は新たに南三陸町産の銀ザケも購入。震災を忘れず、同漁協の漁業者への感謝をもってほしいと友好献立を実施した。
この日は庄内町の5幼稚園、5小学校、2中学校でワカメのみそ汁や銀ザケ焼きが提供された。このうち、余目二小(瀬川幸子校長、児童211人)では両町の交流などについての放送を聴きながら「おいしい」と笑顔で味わっていた。昨年11月、交流事業で南三陸町を訪れた5年生の渡邉航誠君(11)は「種付けは力が必要で大変だった。漁師さんが一生懸命育てたワカメはすごくおいしい」と話していた。