2019年(平成31年) 3月22日(金)付紙面より
ツイート
学校教職員の負担軽減が社会的な課題となる中、県医師会(中目千之会長)と酒田地区医師会十全堂(佐藤顕会長)、酒田市、同市教育委員会の4者は20日、市内の小中学校教職員の心身の健康管理に関する連携協定を締結した。来月から産業医を配置し、面談やストレスチェックなど、主に精神科医とのつなぎ役として教職員の健康の保持増進の環境を整備していく。
労働安全衛生法では、50人以上の事業所には産業医を配置することが義務付けられているが、全国の公立学校の教職員は50人未満が多く、産業医はほとんどいない状況。教職員の健康管理が手薄な上、課外活動など業務量が多く、長時間労働が常態化。保護者との対応などストレスも多いため、うつ病など精神疾患で休職する人が増え、負担軽減が全国的な課題となっている。
今回の協定は、昨秋から県医師会が主導し、県内の各地区医師会を通じ、各市町村に呼び掛けて実現した。酒田地区医師会の医師2、3人が交代で、市内の22小学校、7中学校をそれぞれ1人ずつ産業医として受け持ち、教職員約600人の健康管理に当たる。
当面は、4、5月の時間外労働がともに月100時間を超えた教職員を対象に、6月に面談を行う。また、秋には全教職員を対象にストレスチェックを行う。
県医師会の中目会長によると、うつ病は長時間労働の人や、ストレスの多い仕事に携わる人がなりやすい。重症化して入院すると、復帰しても発症前の業務を十分にこなすことは難しくなるため、早期に発見して専門医につなぎ、通院治療する流れをつくりたいという。公立の小中学校に産業医を配置する取り組みは県内初で、全国的にも先進的という。同様の取り組みは来月から鶴岡市、米沢市でも始まる。
この日、酒田市役所で行われた締結式では、中目会長、酒田地区医師会十全堂の佐藤会長、酒田市の丸山至市長、同市教育委員会の村上幸太郎教育長の4人が、教職員のメンタルヘルス対策や長時間労働など、連携して取り組む事項を盛り込んだ協定書に署名した。
中目会長は「しっかりした制度をつくらないと、学校の先生たちの健康管理は置き去りにされる。酒田を起爆剤に県内各地に浸透させたい」、佐藤会長は「100時間超の残業は一般企業なら『アウト』だが、学校では見過ごされてきた。先生たちが置かれた環境を普通にする努力を酒田から始めたい」、丸山市長は「子どもたちがより良い教育を受けるには、先生たちが健康でなければいけない。協定は本当にありがたい」、村上教育長は「教職員の仕事はストレスが強く、一人で悩みを抱え込みやすい。支えてもらう仕組みの柱を立ててもらった。働き方改革とセットで改善を図りたい」とそれぞれあいさつした。