2019年(平成31年) 3月26日(火)付紙面より
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貧困家庭の子どもたちに食事を無料や格安で提供する「こども食堂」。鶴岡市内で昨年9月からNPO法人の始めた同慈善活動に、ボランティアとして関わってきた2人の高校生がいる。春から県外の大学に進学するという2人は「関わってみて社会の見方が広がった」などと話す。
鶴岡北高校をこの春に卒業する工藤雪乃さん(18)と、門脇彩音さん(18)は、幼少時からの友人。何らかのボランティアに関わりたいと思っていたところ、家族のつてで、NPO法人「ぼらんたす」が同市陽光町の活動拠点「楽家」で毎月2回開催しているこども食堂を知った。門脇さんの第一印象は「都会というイメージがあったけど、鶴岡でもやってるんだ、いろんな家庭があるんだな」。
こども食堂をめぐっては、「来てほしい子どもたちに来てもらうことが難しい」という、本来対象にしていた貧困家庭の子どもたちの参加を推進する難しさがあるとされる。
楽家でも同様の課題を抱えており、ぼらんたすの岩浪武司理事長によると「まずは誰でも来られるところとして始めている」。始めてから半年ほど経過して、幼少の4人きょうだいを連れた母や、双子の幼児の親子、高齢者などが足を運ぶようになった。スタッフも含めて15人余りで食卓を囲むと、大家族のにぎやかなだんらんといった感じになる。
地域の居場所を目指したこども食堂は、高校生2人にとって「貧困といった暗いイメージではなく、交流の場」に映った。11月ごろから料理の下ごしらえなどを手伝うようになって、スタッフとして来ている地域の大人や来場する子どもたちとの接点が生まれたことに意義を感じているという。
それぞれ大学進学で地元を離れることから、19日の夜に行われた回がひとまずの区切り。「お世話になりました」「帰省した時にまた来ます」などとスタッフにあいさつすると、「子どもたちも喜んでくれて、われわれも元気をもらった」などと逆にお礼を言われた。
2人は「核家族化が進んだ今の時代になって、昔あったご近所同士の協力関係と似た役割をこども食堂が担っているのかも」「大学に進学する前に本当にいい経験をさせてもらった」と話していた。
2019年(平成31年) 3月26日(火)付紙面より
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日本海沿岸東北自動車道(日沿道)の「朝日温海道路」で、掘削工事が進む大岩川トンネル(仮称、延長1016メートル)の工事見学会が24日、鶴岡市大岩川地内の現地で行われた。庄内各地から親子連れらが参加し、日沿道の本線となるトンネル内で、事業主体の国土交通省酒田河川国道事務所や施工業者から事業概要や掘削工法などの説明を受け、高速道路建設の工事現場に触れた。
県境を挟む朝日まほろば(新潟県村上市)―あつみ温泉間40・8キロは、遊佐―象潟(秋田県にかほ市)間17・9キロとともに、2013年5月に事業化決定。朝日まほろば―あつみ温泉間は国交省が「国道7号朝日温海道路」として整備し、同事務所が県境からあつみ温泉までの庄内側6・7キロを担当して工事を進めている。
庄内側には5本のトンネルが設けられ、あつみ温泉インターチェンジ(IC)そばの大岩川トンネルが最初のトンネル工事となり、昨年11月から新潟側に向けて本格的に掘削がスタートした。現在、坑口から延長の1割相当の100メートルまで掘削が進んでいる。同トンネルの工期は2020年10月まで。事業費は約38億7000万円。
工事見学会は、朝日温海道路の庄内側の本線工事の本格化に合わせ、鶴岡市が同事務所と連携して企画し、同市をはじめ酒田市、庄内町の親子ら35人が参加した。同事務所の担当者が事業の内容、施工者の奥村組東北支店の担当者が掘削工事の概要について説明。参加者はトンネル全体を覆うためのコンクリート製造の現場プラント、コンクリート吹き付けや岩盤に穴を開けるための大型重機などを見学した。施工者は「トンネルを掘り進んで岩盤が出てくれば、ダイナマイトの発破工法で掘削を進めることになる」などと分かりやすく説明していた。
大型掘削機のデモンストレーション稼働ではトンネル内に大音量が響き、掘り進める場所を正確に判断するためレーザー照射で目印を示していることなども説明され、子どもたちは興味深そうに見学。弟の新太君(7)ら家族で訪れた鶴岡市稲生一丁目の小学4年、五十嵐悠太君(10)は「レーザービームを使っているのに驚いた。絵本で見るのと違って本物のトンネル工事現場は迫力があって、すごいと感じた」と話した。