2019年(令和1年) 5月15日(水)付紙面より
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出羽三山などに伝わる修験道について理解を深める鼎談(ていだん)イベント「修験道 むかし・いま そしてこれから」が11日、鶴岡市のいでは文化記念館で開かれ、思想家や哲学者が修験道の特色や魅力を解説し、教育の在り方などについて意見を交わした。
出羽三山の門前町の同市羽黒町手向地区の住民などでつくる実行委員会が主催し、鶴岡市と手向地区自治振興会が共催。思想家・武道家で鶴岡とゆかりのある内田樹さん(神戸市)、哲学者の内山節さん(群馬県上野村)、若い世代のための仏教塾を主宰する曹洞宗僧侶の藤田一照さん(神奈川県葉山市)の3人と、「立会人」として羽黒山伏で出羽三山神社責任役員理事の星野文紘さんが登壇した。
武道や仏門などそれぞれが歩む道の活動と修験道を対比しながら、藤田さんは「禅の修行は建物の中で行われ、教義があり洗練されている感じがあるが、山伏の動く修行は爽快。自然との親近感を感じ主動的。理屈を言わないのがいい。自分の生身の体と五感を使うのが、学校的な学びのモデルになるのでは」と語った。
内山さんは「大乗仏教の心理は空。語ったり概念化することができない。その骨格部分を守ってきているのが修験道といえる」と解説した上で、「大乗仏教は在家が中心。修験道も山に行って修行し里に帰って普通の生活をする人たちを軸にしている。現実世界の矛盾を背負いながら山に行く。そこへ導く人はいるが、教えてくれるのは自然や修行」と述べた。
内田さんは「どうしたら死ぬのが怖くなくなるだろうか考えたとき、外側にある自然と自分の中にある身体の自然がつながっていると、そう感じることができるのでは。つながりを邪魔しているのは自我。自我の壁をつくりながら壊していく営みを人間は繰り返している。つくっては壊す不思議な循環の開放性を修行で感じる」と話し、「修行の本質は開放性。今の日本の学校教育に一番欠けている部分。達成目標を開示しない、査定しない、他人と能力を比較しない。学校教育の土台をひっくり返す必要がある」と力説した。