2019年(令和1年) 5月21日(火)付紙面より
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文化庁は20日、酒田市を代表とする全国15道府県の38市町が申請していた日本遺産のストーリー「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間?北前船寄港地・船主集落?」の内容変更で、新たに鶴岡市を含む全国6県の7市町の追加認定を決定したと発表した。今年9月には酒田、鶴岡両市が連携し、第27回北前船寄港地フォーラムin庄内を庄内地方で開くことが決まっており、追加認定によって名実ともに庄内全体を北前船寄港地としてアピールしていく基盤が整った。
北前船をテーマとした日本遺産は2017年4月、酒田市や北海道函館市、秋田県秋田市、新潟県新潟市、石川県加賀市など全国7道県の11市町が認定された。昨年5月には大阪府大阪市や兵庫県神戸市など14道府県の27市町が追加認定された。第3弾となる今回は、酒田市が代表となり1月25日付で、県を通じ変更を申請していた。
追加されたのは、鶴岡市のほか、新潟県出雲崎町、石川県金沢市、兵庫県姫路市、たつの市、香川県多度津町、広島県竹原市の計7市町。これで北前船関連の日本遺産の自治体は16道府県の45市町、構成文化財は60点増の366点となった。構成文化財の増加分の内訳は、認定済みの市町の追加9点、新規認定市町分が51点。
鶴岡市の構成文化財は、北前船で栄えた当時の町割りがそのまま残る「加茂港周辺の町並み」、船主の家屋と蔵「石名坂家住宅主屋・蔵」(国登録有形文化財)、北前船で財を成した商人たちの寄進による「浄禅寺の釣鐘」、「善寳寺五百羅漢堂」(国登録有形文化財)、「致道博物館所蔵の北前船関連資料群」の5点。
認定自治体は全体として17年度から3カ年、文化庁の助成金を受け、共通のホームページ作成や観光ニーズ調査、広域観光ルートづくりなどに取り組んでいる。助成金が本年度で終了することから、今後の追加認定はなく、45市町が北前船関連の日本遺産の“最終形”になるとみられている。
北前船寄港地フォーラムは、作家で酒田市美術館長(当時は秋田公立美術工芸短大学長)の石川好氏が、北前船の航路をコリドール(回廊)に見立て地域間交流を促進する「北前船コリドール構想」を提唱したのが始まり。趣旨に賛同した平田牧場グループの新田嘉一会長が中心になって07年11月に酒田市で第1回を開き、その後、規模を拡大しながら全国の寄港地で開催。日本遺産認定に向けた動きの母体になった。今年は関連行事を含め9月10―13日に酒田、鶴岡両市で開き、中国・大連市の行政・観光業者を含め600人程度の来庄が見込まれている。
鶴岡市の日本遺産は「自然と信仰が息づく『生まれかわりの旅』?樹齢300年を超える杉並木につつまれた2446段の石段から始まる出羽三山?」(17年度認定)、「サムライゆかりのシルク 日本近代化の原風景に出会うまち鶴岡へ」(18年度認定)に続き、3件目となった。
文化庁の今回の認定内容の変更では、県が申請していた「山寺が支えた紅花文化」(関連自治体=山形市や寒河江市など7市町。18年度認定)で、新たに「深山和紙」など構成文化財3点なども追加された。
追加認定に鶴岡市の皆川治市長は「関係者と一体となり、加茂の町並み保全や認定された価値の地域内外への普及啓発、国内外への情報発信、インバウンド観光にも努めたい。今後、山、里、海のバラエティー豊かな3つの日本遺産があることを生かした誘客を図り、一層の観光振興、交流人口拡大に取り組んでいく」との談話を発表した。