2019年(令和1年) 8月10日(土)付紙面より
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高校生以下を対象にした日本有数のピアノコンクール、第52回カワイピアノコンクール(2日、横浜みなとみらいホール)に東北代表として出場した鶴岡南高1年の剣持尚翔(なおと)さん(15)=鶴岡市新形町=が、ソロ部門Aコース(高校1年生以下)で最高賞の金賞を受賞した。剣持さんは「自分なりの演奏をやり切ろうと心掛けた。ミスはあったけど、受賞できてうれしい。ほっとしている」と喜びに浸った。
3歳上の兄が習っていたこともあり、影響を受けて4歳からピアノを始めた。小学6年の時にも東北代表として同コンクール・ソロ部門Cコース(小学6年生以下)に出場して金賞を受賞した。同コンクールの「金賞」は該当なしの場合もあり、受賞のハードルは高い。予選を含めた出場者は全体で約2万人に上る。
5月に宮城県で行われた東北大会で最優秀賞を受賞し、全国大会への切符を手にした。全国大会は自由曲と課題曲を1曲ずつ演奏する。自由曲は、好きな作曲家でもあるロシアのプロコフィエフの「4つの小品Op・4」より3曲を選んだ。
一方、課題曲はコンクールのために書き下ろされた伊佐治直さん作曲の委嘱作品が、東北大会後に提示された。楽譜のみの提示で、誰も演奏したことのない作品。しかも曲想がつかめず、難解な曲だった。指導する同市若葉町のピアノ教室の石黒桃子さん(29)と二人三脚で、伊佐治さんの過去の作品を聴くなどして作者の思いを読み解き、曲調を固めて全国大会の本番に臨んだ。
全国大会のソロ部門Aコースには、各ブロック代表11人が出場。3番目の演奏順だった。前の2人の演奏を聴き、「誰もが上手だ」と思った。課題曲の演奏にもそれぞれの解釈があり、「自分の演奏とは違う」と感じた。でも大会の雰囲気にのみ込まれないよう、課題曲、自由曲とも自分らしい演奏を心掛けようとステージに登った。
Aコースの金賞は剣持さんだけで、他は銀、銅賞の該当はなく努力賞3人の結果。圧倒的な評価だった。全国大会に同行した石黒さんは「審査員席の後ろで聴いていたら、剣持君の課題曲の演奏に審査員の方々がうなずいていた。技巧的でなく澄んだ音の響き、きれいさが際立っていた」と話す。
中学2年の時は、予選を通過できず全国大会出場を果たせなかった。剣持さんは「中学生の時は悔しい思いをした。2年後に戻ってくることができたし、金賞を受賞できてうれしい」と喜びを表現。兄を追って医学部への進学を目指している。ピアノでは初挑戦となる、10月の「ショパン国際コンクール・イン・アジア」高校生部門の本選に出場するのが当面の目標。