2020年(令和2年) 2月6日(木)付紙面より
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昨年春の類焼で作業場と自宅を失った庄内町余目の陶芸家・斎藤勇さん(79)が、多方面から支援を受け、先月、梵天窯の再スタートを切った。
斎藤さんは東田川郡栄村(現庄内町)家根合生まれ。30歳で梵天塚の自宅に窯を設け、本格的な作陶活動を始めた。師を持たず独学で長年研さんを重ね、これまで県総合美術展で県展賞や奨励賞を受賞しているほか、現代日本陶芸展や朝日クラフト展、日本美術展覧会など数々の入賞を果たした。
昨年4月23日の類焼による焼失から再建した作業場は、以前の3割ほどの広さに縮小を余儀なくされ、展示場の間取りも変更された。日展入選作や最高賞を受賞した作品群も火災で焼失した。精神的・肉体的にショックが残り体がきつい。顧客も一時途絶え新規開拓する気持ちが萎えた時もあった。
そんな中、窮地を応援したのが「陶芸家・斎藤勇さんの創作活動を支援する会」(長南久良代表)。長南代表は斎藤さんの庄内農業高校時代の同級生であり、日本美術展覧会の入選時も祝賀会を企画した。
斎藤さんは仲間からの応援に応えるように徐々に気力を取り戻し、「以前は家族を養う必要もあり商売気もあったが、今は違う。これを機に器ではなく本来の芸術表現に向かうようになった」と話し、意欲を見せる。
これからは生活用品ではなく芸術作品を創るという。作陶を志し、独学で研究を始めた頃の気概に戻った。窯元に隣接の展示場には焼け残った美しい作品群が並ぶ。老境に入ってから鬼気迫る作品を残した芸術家は多い。今後の作品が期待される。問い合わせは斎藤勇さん=電080(9257)7755=へ。