2020年(令和2年) 2月25日(火)付紙面より
ツイート
落語家・柳家花緑さん(48)の講演会が23日、鶴岡市のマリカ市民ホールで行われた。「発達障がいは私にとってギフトでした」と題したもので、識字障害を持つ自らはそれを受け止め、周囲は「個性の一つとして認めること」の重要性を説いた。
強風でJR特急「いなほ」下りの運行が不安定だったため、新潟からは車を使っての来鶴。会場入りはギリギリになったが、230人満員の会場を見渡しながら「子どもの個性をもっと生かしてほしい」と訴えた。
「小さい頃から多弁症で、落ち着きがないことを自覚していた。忘れ物も多過ぎた。そして字が読めなかった」という。難しい漢字を読めないのではなく、ごく簡単なものが「記号に見え、平仮名のルビを振らないと全く読めない」という症状だった。
学力が伴わないものと通知表は低く抑えられた。一方、「過剰集中」という面があり、好きな落語に関しては周りも驚く集中ぶりで、筋書きを丸ごと記憶するやり方を覚え、22歳という戦後最年少の真打ち昇進につなげた。
「子どもの能力を一つの枠に押し込めないでほしい」と花緑さんは強調。発達障害の場合でも、別の部分で確実に高い能力があることを、家族・学校・社会が認めてほしいと、さらに広げて障害者全体に対し、一つの個性として認め合う多様性のある社会を望んだ。その後、電子マネーを題材にした新作落語と、古典落語「つる」をダイジェスト版にして披露した。
県委託の「早期からの親子サポート事業」の一環で、親子サポートステーションメグシィ(水原元社長)が主催したもので、講演会に先立って、石川充医師(鶴岡協立病院付属クリニック所長)が「お母さん、あなたは輝いてますか?」と題した講話を行った。
2020年(令和2年) 2月25日(火)付紙面より
ツイート
厄介者のムラサキウニが、だだちゃ豆の殻を食べたら、おいしくなりました―。県立加茂水産高校の海洋資源科の3年生による課題研究で、そんな一挙両得の結果が出た。神奈川県ではキャベツ残渣(ざんさ)を用いた先行研究があるが、鶴岡市の特産品だだちゃ豆でも味の向上が科学的に裏付けられたという。磯焼けを引き起こすムラサキウニと、鶴岡ブランドの残渣の有効活用が期待される。
ムラサキウニは、磯焼けを引き起こす食害対象種。磯焼けの藻場に生息する飢餓状態下では可食部が少なく生臭さもあることから食用には向かない。本県でも駆除しても廃棄するだけだったという。
神奈川県水産技術センターでは2015年ごろから、三浦半島特産のキャベツ残渣を活用し、食用「キャベツウニ」の養殖研究が取り組まれている。
加茂水産でもこの先行研究を参考にして昨年度から課題研究を開始。初年度は当時の3年生3人が取り組み、だだちゃ豆に多く含まれる食物繊維(セルロースなど)に対するウニの分解能力を検証。ムラサキウニはだだちゃ豆残渣から十分な栄養を得ることができると分かった。
昨年度の研究を引き継ぎ、新たに高橋七海さん、本間麗華さん、松田栞奈さん、渡會円さんの3年生女子4人で取り組んだ本年度は、だだちゃ豆ウニの官能検査をはじめ、味に関係するアミノ酸や化合物のメタボローム解析、だだちゃ豆に対する嗜好(しこう)を検証。扱ったウニは500匹近くに上ったという。
官能検査の結果は、通常の餌となる海藻よりも「見た目」「匂い」「甘味」が向上。実食で協力してくれた教職員9人のうち8人が「海藻やサクランボをエサにした中で、だだちゃ豆ウニが一番おいしかった」と答えた。山形大農学部の及川彰准教授の協力で行われたメタボローム解析では、甘味のトレオニン、苦味のリシンといったアミノ酸の割合が市販品のレベルに近かったという。ただ、嗜好性については、だだちゃ豆を積極的には摂食せず、果物類などが人気だったという。
研究は現在のところ受賞には至ってないが、研究メンバーは他校や東北6県の水産・海洋系高校が集まった課題研究発表などにも出場して会場の反応に手ごたえを感じている。指導する海洋資源科アクアライフ系の佐藤専寿教諭(35)も「大学レベルの研究。生徒たちも頑張ってくれた」と評価。メンバーの高橋さん(18)は「海の資源は減り、人材も不足。研究が少しでも役に立てばと願う。引き継ぐ後輩たちもウニの脱走などに苦労すると思うが、新たにテーマを設定して頑張ってもらいたい」と話した。