2020年(令和2年) 3月10日(火)付紙面より
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JA庄内たがわ月山ワイン山ぶどう研究所が、水稲の育苗ハウスを活用して栽培したブドウを使ったワインの販売を始めた。春先以外は使われないハウスの有効活用とともに、露地栽培に比べ病虫害に遭いにくく品質向上も期待できる“一石二鳥”の栽培方法。市場デビューした赤、白2種のワインに、地元のソムリエたちは「庄内の食材と合うワイン。赤は熟成させると、さらにおいしいワインになりそうだ」と評価している。
育苗ハウスの活用は2015年から、同JAが月山ワイン用のブドウ原料増産の一環で取り組みと普及を進めている。昨年は鶴岡市の藤島、羽黒、櫛引の各地域と庄内町立川地域、三川町で白品種のシャルドネと赤のメルローの2品種合わせて、計13人が45アールのハウスで栽培し、3・2トン収穫された。育苗ハウス活用によって、月山ワインの原料主産地の同市朝日、櫛引地域以外でのワイン用ブドウ栽培が広がりつつある。
ブドウの苗木をハウス内の側面に並べて植え、生育させる。水稲の育苗ハウスは4月中旬ごろから1カ月程度使われるだけで、その後は利用していない農家が多い。一方で、ブドウは葉を広げるのが5月以降のため、日照など育苗への影響はないといい、ハウス遊休期間の利用法として着目した。雨よけのハウス栽培のため病虫害も少なく、農薬散布の回数も減らすことができるなど、露地栽培に比べ低コストといった利点もある。
広さ約330平方メートルのハウスで40本栽培し、収穫量400キロが目標。昨秋は約260平方メートルで690キロを収穫した農家もあった。糖度は20度を超えるものもあるなど平均で18度を超え、高品質のブドウが収穫された。
先月26日に発売開始したのは白の「ソレイユ・ルバンシャルドネ2018」(750ミリリットル入り、2750円、898本)と、赤の「ソレイユ・ルバンメルロ2018」(750ミリリットル入り、2000円、622本)。いずれも18年産のブドウを使い同年秋に初めて単独で醸造したワインで、たる熟成で仕込んだ。同研究所醸造責任者の阿部豊和さんは「ハウスで雨に当たらない分、完熟を待つことができ、品種の特性を引き出せる原料となった。ブドウそのものの味わいを楽しめるよう醸造した。その果実味を楽しんでほしい」と話している。
新作ワインの発表会が先月26日、鶴岡市のグランドエル・サンであり、生産者や月山ワイン文化の会の会員ら約180人が参加した。地元の日本ソムリエ協会メンバーも顔をそろえ、同協会執行役員山形支部長でラウンジ「マーヤ」店主の清和真寿美さんは「白のシャルドネは、刺し身や野菜にも合い、庄内の料理に寄り添っている感じ。赤のメルローは、熟成を重ねれば、さらにベルベットのような滑らかさが出て、いいビンテージになりそう」と話した。同研究所のホームページでネット販売のほか、鶴岡市内の酒販店などで取り扱っている。問い合わせは同研究所=電0235(53)2789=へ。
2020年(令和2年) 3月10日(火)付紙面より
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新型コロナウイルス感染対策に伴う会合や式典の相次ぐキャンセルで、ホテルや式場の運営会社が打撃を受けている。3月中の予約の9割がキャンセルという鶴岡市のグランドエル・サンを運営するエル・サン(早坂和男社長)は、閑散期を活用して地域貢献事業に注力する。
卒業式の中止や縮小を受けて、卒業生たちに思い出づくりの場を提供しようと同社が始めた無料の写真撮影ブースサービス「卒業を写そう」。屋内外に2種類の撮影ブースを設置。その場で渡せるオリジナル感謝状といった雰囲気を盛り上げる各種アイテムも用意するほか、写真撮影・プリントサービスもある。
開始初日の7日、帯谷綾子さん(41)=同市伊勢原町=は、今月中旬に幼稚園の卒園式を控える次男の理仁(まさと)君(6)と来場。「思い出になります」と喜んでいた。
このほか、館内のホール「ローズルーム」を無料開放し、コワーキングスペースとして利用してもらう「ちょこっとカフェ×ワーキングスペースinエル・サン」を行っている。午前10時から午後6時までで、期間は31日までを予定。Wi―Fi環境や100円ドリンクサービスもある。
いずれのサービスも予約不要。
エル・サンの菅井智成営業課長(39)は「感染拡大の影響で頭を抱えている状況だが、こんな時期だからこそ助け合えれば」と話した。