2020年(令和2年) 7月7日(火)付紙面より
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わが国に古くから伝わる建築工法「伝統木構法」を学ぶ「日本の伝統的大工塾」(塾長・川上清太郎田川建設労働組合執行委員長)が5日、鶴岡市で開塾した。庄内地方の大工を中心に建築に関わる18―50歳の男女11人が入塾し、今後3カ年にわたり月2回程度、地元のベテラン棟梁たちから手ほどきを受ける。
伝統木構法は、ムクの地域産材による柱や梁などの構造材を、金具や接着剤でなく、組み木細工のような「仕口」「継手」などの技術でつなぐ。地震のときは木がこすれ合う摩擦で揺れを吸収する。維持管理しやすく、耐久性にも優れているという。「在来軸組み工法」と混同されがちだが、こちらは西洋建築の技術を応用したもので、コンクリート基礎に構造材を金具で固定し、斜めの筋交いを入れ、家全体をゆがまないよう頑丈にして外力に抵抗する。
今回の大工塾は、田川地区の大工や左官、板金などなど建築に関わる技術者約1600人が加盟する田川建設労働組合が、国土交通省の担い手育成に関する事業採択を受けて取り組む。年約90万円の助成を、3カ年受ける計画。初級と中・上級に分かれ、初級は厚生労働省ものづくりマイスターの大井正之さん(三川町横山)、中・上級は国の「現代の名工」(卓越技能者)の剱持猛雄さん(鶴岡市東原町)の指導を受ける。
この日、鶴岡市大塚町の田川建設労働組合で行われた入塾式には、塾生9人が出席。川上塾長はあいさつで「最近は黒船のように『プレカット』が普及し、『墨付け』はほとんど行われなくなった。使う機会が少なくなっても、伝統技術は絶やしてはいけない」と述べた。
プレカットは、事前に工場の機械で木材を加工し、現場で設計図に従って組み立てる工法。川上塾長によると、最近は墨壺を使って木材に線を引いたり、のみで刻むこともない。そのため、新築はできるが、部分的なリフォームは苦手という大工が増え、業界の大きな課題になっているという。
家業の大工を継いで6年目という今井康平さん(27)=庄内町清川=は「地元の仕事の大半はプレカットだが、家全体の構造が分かっていないと駄目で、以前から墨付けを学びたいと思っていた。覚えれば、自信を持って仕事ができると思う」と話した。
川上塾長は「伝統木構法は地元産材を使う。生まれ育ったその土地の木を使うことで、木の香りやぬくもり、質感が良く、落ち着く家になる。技術とともに、そうして建てた家の良さも広めていきたい」と話した。
今後、墨壺など道具の使い方や刻みの技術をはじめ、実践としてごみ置き場や小屋の建築などに取り組む。