2021年(令和3年) 4月9日(金)付紙面より
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明治維新後の1872(明治5)年に旧庄内藩士が山野を耕し、桑園を整備して養蚕を興した松ケ岡開墾(鶴岡市羽黒町松ケ岡)150年を祝う記念事業開始式が7日、国指定史跡・松ケ岡開墾場の本陣で行われた。開墾を基に鶴岡は国内最北限の絹産地として発達し、絹産業は鶴岡・庄内の近代化と発展に大きく寄与した。開始式には、松ケ岡地区に住む「開墾士」の子孫らが出席し、先人の労苦に思いを馳せるとともに、関係者が記念事業の成功に向けて気勢を上げた。
松ケ岡開墾では、旧庄内藩士約3000人が山野を切り開いて桑畑や大蚕室群を整備。開墾士の末裔(まつえい)らが地縁団体・松ケ岡開墾場(堀誠理事長)をつくり、開墾精神とともに多様な伝統を守り伝えている。
開始式に先立ち、毎年4月7日に地縁団体が行っている開墾記念日の開墾式があり、旧庄内藩主酒井忠篤(ただずみ)、西郷隆盛、菅実秀の創業の3先人をまつった祭壇に拝礼。総長で酒井家第18代当主の酒井忠久さんが「先人の意志と人のネットワークで150年の歴史が続いてきた。不易流行の通り、根本を大切に守りながらも時代に合った物事を取り入れ、ますます発展することを祈念する」とあいさつした。
本陣には開墾記念日にだけ公開される、忠篤公書「気節凌霜天地知(きせつりょうそうてんちしる)」が掲げられた。西郷隆盛が開墾士たちに贈った言葉で、これを盛り込んだ「松ケ岡開墾場綱領」を唱和した。
記念事業開始式は地縁団体と鶴岡市が開き、関係者約40人が出席。酒井総長と皆川治市長があいさつ。堀理事長から皆川市長に「松ケ岡開墾百五十年」ののぼり旗が渡され、「エイ、エイ、オー」の合図に合わせて出席者が拳を突き上げた。開墾場の松ケ岡開墾記念館(1番蚕室)では、旧庄内藩士で開墾事業と開墾場経営に携わった黒崎研堂の企画展を開催(来年3月末まで)。開始式に続いて酒井総長による説明会が開かれた。
記念事業では、満開となった桜のライトアップ、9月には鶴岡シルク発祥の地トークイベントやクラフトフェスタなどを予定。地縁団体の松ケ岡開墾場は11月に記念式典と講演会、祝賀会を開催するほか、記念誌の出版、里山整備なども計画している。