2021年(令和3年) 5月23日(日)付紙面より
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「生き物少年」として幼少時から昆虫採集や魚採りに熱中、現在も里山で田や雑木林の手入れをしながら暮らす、写真家で切り絵作家の今森光彦さん(66)=滋賀県大津市在住=の作品を集めた個展が22日、酒田市美術館(石川好館長)と、隣接する土門拳記念館(池田真魚館長)でそれぞれ開幕。主に美術館では切り絵、記念館では写真を中心に展示しており、「今森ワールド」が、統合を控えた芸術文化施設を華やかに彩っている。
今森さんは1954年生まれ。大学卒業後に独学で写真を学び、80年からフリーランス写真家として活躍。世界各国を巡って生き物の生態を追求しており2009年、写真展・写真集「昆虫 4億年の旅」で毎日新聞社が制定する「第28回土門拳賞」を受賞した。その一方、チョウや鳥、植物をモチーフに精微で生き生きとした作品を創造する切り絵作家としても広く知られている。
財政面の強化や業務の効率化、質の向上などを目的に、土門拳記念館(高橋修理事長)、市美術館(理事長・丸山至市長)の2つの公益財団法人(公財)は合併し、6月1日(火)に新公財「さかた文化財団」が設立される予定になっており今回、それぞれが運営する記念館、美術館が共同企画。今森さんの作品展を数多く手掛けている写真展開催・企画・運営などのクレヴィス(東京都)によると、写真と切り絵のパッケージ展は7カ所、2館にまたがって同時開催は初という。
美術館では「自然と暮らす切り紙の世界」と題して切り絵と、その立体作品計142点を展示。切り絵では1つの作品に50種余の色紙を使うこともあり、大輪を咲かせたヒマワリの周囲を飛ぶチョウの一種「キマダラセセリ」、必死の形相で走る「ワシミミズク」といった作品がある。
「自然と暮らす写真のまなざし」をテーマにした記念館では土門拳賞を受けた作品を中心に54点を飾っている。代表作として名高い、「糞(ふん)ボール」でおなじみの「スカラベ」、その文様が美しい「メダマカレハカマキリ」などを紹介。市民らは、生き物たちの生き生きとした生態を紹介する作品の数々に見入っていた。
展示は、美術館が7月9日(金)、記念館が同10日(土)まで。両館では新型コロナウイルス感染拡大防止のためマスク着用での来場を呼び掛けている。