2021年(令和3年) 6月24日(木)付紙面より
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4、5月に発生した凍霜や降ひょうによる農作物被害を受け、農林水産省生産局の担当者が22日、鶴岡市のリンゴと庄内柿など県内の産地を巡って被害状況を確認した。凍霜でほとんどの花芽が枯死し、今季の収穫が全く見込めなくなった庄内柿の生産者は「収穫ゼロでも消毒などの管理はいつも通り行わないといけないし、来年に実がなるかも分からない。管理経費負担軽減と栽培技術指導を行政とJAには強くお願いしたい」と訴えた。
今月14日に自民党県連が生産者への支援策充実などを求め、野上浩太郎農林水産大臣に要望したのを踏まえ、同局の佐藤紳園芸作物課長や園芸作物の研究専門官ら3人が訪れた。高畠町のブドウ、上山市の西洋ナシ、寒河江市のサクランボを含め現地を巡り、生産者に状況を聞くなどして被害の実態を調査した。
鶴岡市三千刈の斎藤司さん(58)の畑では、5月25日の降ひょうで多くの実が傷ついたリンゴについて説明を受けた。斎藤さんは、300本の成木で良品として出荷できるのは良くて4―5%とし、「80代の人たちもこんな被害は初めてと言っている。異常気象が通常気象となり被害が繰り返される中、農家が共同で使える加工施設があれば、生産への安心につながる」などと支援を求めた。
同市長沼の竹内耕蔵さん(78)の畑では庄内柿の成木80本が、氷点下まで気温が下がった4月10―11日の凍霜で花芽が枯死し壊滅的な被害を受けた。竹内さんは「春先は、これまで見たことない状況だった。長沼地区全体に被害が広がっている。生産への意欲が失われ、管理がなされない放任樹が増えると、落葉病や鳥獣被害の発生源になってしまう。そうした面への対応も考慮してほしい」と訴えた。
被害現場を回った農水省の佐藤課長は「被害の大きさを実感した。来年の生産につながるよう、実態に即して国と県を合わせた支援策を工夫したい。営農意欲が失われないよう、災害リスクに備えた国の対策も活用してもらいたい」と話した。
鶴岡市が21日現在でまとめた被害状況によると、4月の凍霜害は庄内柿、サクランボで約1億7000万円、5月の降ひょう被害はリンゴ、庄内柿、和ナシ、洋ナシ、モモ、ブルーベリー、アスパラガスで約2億8000万円に上っている。