2022年(令和4年) 3月16日(水)付紙面より
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鶴岡市出身で、将棋のプロ棋士養成機関「奨励会」に所属する岡部怜央(れお)三段(22)=東京都在住=が12日、東京・千駄ケ谷の将棋会館であった第70回三段リーグ戦を終え、最終成績15勝3敗で上位2人に入り、プロとなる四段昇段を決めた。4月1日付でプロ棋士となる。小学6年で奨励会に入会し11年で念願だった四段昇段。岡部さんは荘内日報の取材に「つらい時期もあったが、応援してくれた方々に(昇段を)報告できうれしい。ほっとしている」と話した。県内出身のプロ棋士は、2009年の阿部健治郎七段(33)=酒田市出身=以来4人目で、鶴岡出身者としては戦中・戦後に活躍した故・北楯修哉九段以来2人目。
岡部さんは、祖父や2歳上の兄の影響で将棋を始め、地元の将棋教室に通った。小学6年で出場した小学生名人戦決勝大会で全国2位に輝くなど頭角を現し、関東奨励会入会。小学6年から高校3年まで、鶴岡の自宅と将棋会館を夜行高速バスで往復するなど、プロ棋士への夢を追った。高校2年で、プロに最も近い三段に昇格し、19歳で郷里を離れ将棋に専念。5年半かけて三段リーグを突破した。三段リーグ戦は年2回開かれ、各自18局を行い、原則として上位2人しかプロ棋士となる四段へ昇段できないという狭き門だ。
岡部さんは「高校2年で三段に昇段し、10代のうちには棋士になれればと思ったが、四段への昇段レース争いは厳しく、そんなに甘い世界ではなかった」と、プロ棋士を目指すし烈な争いを振り返った。今期は着実に積み重ねてきた成果を発揮し、チャンスをものにした。「それほど若手の部類ではないが、20代のうちに何か目に見える形で成績を挙げ活躍したい。まずは順位戦で上位のクラスへと順位を上げていきたい」と抱負を語った。
昇段を決め、師匠の加瀬純一七段と鶴岡の実家にも連絡し、支えてくれた母親からは「よく頑張ったね」とねぎらいの言葉を贈られた。「いい報告ができて良かった。少しは親孝行できたかも」と話した。
岡部さんが小学生時代に通った将棋教室を運営する日本将棋連盟鶴岡支部の上野伸一支部長(70)は「一生懸命に考えて差す子どもだった。早くに三段となったが、何度かあった四段昇段のチャンスを逃し、本人もきっと苦しんだ時期があったと思う。それを乗り越えての昇段。うれしい。これからの活躍を期待したい」と話した。