2022年(令和4年) 12月9日(金)付紙面より
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鶴岡市にある慶應義塾大先端生命科学研究所(冨田勝所長)の研究内容や共同研究の事例を紹介する「やまがたバイオサイエンスセミナー」が7日、同市覚岸寺の鶴岡メタボロームキャンパス・レクチャーホールで開かれ、先端研発バイオベンチャー企業の最新の取り組みなどが紹介された。
人工構造タンパク質素材を開発する「スパイバー」の共同創業者の菅原潤一取締役兼執行役員が同社の歩みと現状を報告。今年10月に従業員が300人を超え、このうち約50人が海外出身者となっていることを紹介し、「グローバルな組織となっている。海外を含め400件を超える特許を出願しており、タンパク質を素材として使いこなすための世界トップの研究開発体制が構築され、競争優位性を保っている」と説明。タイに整備した量産工場が稼働を始め、大量のタンパク質素材を生産していること紹介し、「アパレルを中心にさまざまな商品への活用が進み、先月には国内大手化粧品メーカーのマスカラの販売も始まった。事業は次の段階に進み、短期的には動物由来、石油由来の素材の置き換え、長期的には医薬品や食品分野にも貢献していきたい」と述べた。
昨年設立された「フェルメクテス」の大橋由明社長は、発酵微生物の納豆菌を活用して高品質なタンパク質を高効率で生産し、「納豆菌粉」として多様な食品の加工に向ける事業内容を説明した。
冨田所長は「鶴岡サイエンスパークの最新情報」と題して基調講演し、ベンチャー企業9社の動向などを紹介。県のバイオクラスター形成促進事業による先端研との共同研究の事例発表があり、研究者や企業代表がワイン発酵に伴う物質変化や熟成リンゴ酢の開発について、成果を報告した。
セミナーは、地域の高度学術研究機関や企業と連携し県の「バイオクラスター形成促進事業」に取り組む庄内地域産業振興センターが、2012年度から毎年開催。今回は企業関係者ら約80人が来場したほか、県外を含めオンラインでも約60人が参加した。