2023年(令和5年) 6月8日(木)付紙面より
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鶴岡市面野山の農家・杉山司さん(43)がAI(人工知能)を活用したイチゴ栽培に取り組んでいる。今年3月、労力の軽減を図るためハウスの両脇にビニールを自動開閉して室内温度を調節する「電動カンキットシステム」をイチゴハウス全6棟に導入した。杉山さんは「毎日の温度管理を徹底することでイチゴの品質が向上した。何より農作業に対する自分自身のストレスが全くなくなった」と効果を話している。
3世代で農業を営む杉山さんは鶴岡市下川の庄内砂丘でアンデスメロンとイチゴを栽培している。イチゴは「かおり野」「章姫」「やよいひめ」の3品種。例年9月に苗を植えて育て11月下旬から翌年6月にかけて収穫、鶴岡市内の産直施設に出荷している。
これまで課題だったのが毎日の温度管理。早朝から夜まで、その日の天候を見定めながらハウスのビニールを手動で開け閉めして適温に保つことが大きな負担となっていた。
そこで導入したのが室内温度を自動調節する最新型のAIシステム。温度設定を入力すると、AIが自動的にビニールを小まめ(8段階)に開閉調節する。電気で動くが停電になった場合は、非常電源に切り替えれば問題はない。ビニールの開閉は左右同時、片側だけでもOK。雨にも反応して自動的にビニールを閉めるという優れものだ。
杉山さんは「導入前は1日3、4回、自宅から遠く離れたハウスまで出かけて開けたり、閉めたりする作業に追われる毎日だった。これが重労働。何とかならないものかと試行錯誤していた」と話す。
導入後はその手間が省け「その合間に他の農作業ができる。イチゴだけでなくメロンと稲作もしているので本当に助かっている。すべて自己資金でそれなりの金額はしたが、その価値は十分ある」と笑顔を見せる。
杉山さんは県立庄内農業高校から新庄市の県立農業大学校に進学。ノウハウを学び、祖父母と両親の農業経営を支えた。父親が1棟で始めたイチゴ栽培は6棟まで拡大。収入も安定した。この春、中学1年になった長男は大の農作業好き。休日になると小学5年の長女も仕事を手伝うという。
杉山さんは「農家の後継者不足や離農が問題となっている中、私たちは時代に即した最先端の農業をしていかなければならない。若い人たちが自ら『農業をしてみたい』と魅力を感じる環境づくりが大切。スマート農業は必要不可欠なアイテムだと思っている」と語る。
現在、「よつぼし」という品種のイチゴ栽培を試験的に始めた。AIの導入で以前、育てていた「夏イチゴ」の復活も視野に入れる。将来的には「観光イチゴ園」として子どもたちや家族連れ、お年寄り、インバウンドで訪れた外国人を対象に「もぎ取りが楽しめる農園にすることがドリーム」と青写真を描く。
杉山さんの農場ではスマート農業の導入を考えている農家や山形大学農学部の学生など、AIシステムに関心があれば自由見学も受けている。