2025年(令和7年) 1月25日(土)付紙面より
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鶴岡市上畑町のカフェ&ベーカリーEN/ME(エンメ)では、同市の在来作物に登録されている朝日地域のヤマブドウで作った酵母を使ったパンの通年での提供を始めた。オーナーの笹原悠治さん(34)は「この土地ならではの食材で作る味わい深いパンを楽しんでほしい」と話している。
ヤマブドウは、古くから日本の山に自生しており、甲州ブドウとともに日本独自のブドウとして知られている。ポリフェノールや鉄分を多く含み、健康食品としても人気が高い。ヤマブドウは朝日地域の観光農園「なんば農園」から仕入れた。同農園では50年ほど前からヤマブドウを農作物として栽培しており、15年ほど前から約1ヘクタールを自社農園として整備し、摘み採り体験に対応するほかジュース、ジャムなどを販売。体にも良いと全国各地にファンがいる。
エンメは昨年秋に、全国的に開催された在来作物や郷土料理を伝える食のイベント「種と旅と」に庄内から鶴岡市のmanoma(まのま)、gira e gira(ジーラジーラ)と共に参加。その際初めて、なんば農園のヤマブドウから作った酵母を使ったカンパーニュを販売し、好評を得た。カンパーニュとはフランスパンの一種で田舎風の食事パン。表面に十字の切り込みを入れてあるのが特徴。
ヤマブドウの酵母は、皮付きの実に水と少量の砂糖を加え、5日間ほど発酵させて作る。この天然酵母とヤマブドウを搾った果汁を、鶴岡産小麦などを配合した生地に加えたカンパーニュは週に1度、製パン担当の芝田秀行さん(48)が焼いている。直径20センチほどの半円の型で、一度に2―3個作り、4分の1カットで販売している。具材に含まれるレーズンはヤマブドウではなく通常の干しブドウだという。カンパーニュは他にも2種類あり、売れ行きを見ながら日替わりで焼いており、カフェのメニューとして提供するものもある。
笹原さんは「この空間にいることが価値があると思えるカフェをつくりたいと思い、4年目を迎えた。在来作物にフォーカスした昨年のイベントは、庄内の良さを見直すきっかけにもなった。朝日のヤマブドウも含め、これからも在来作物をメニューとして取り上げていきたい」と話していた。