2025年(令和7年) 1月25日(土)付紙面より
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元兵庫県議が亡くなった。自殺とみられている。政治団体の党首が、SNS(ネット交流サービス)などで誤った情報を発信したことが背景にあるのではないかとされる。兵庫県警は「事実無根の、明白な虚偽がSNSで拡散されている」と、党首の情報を否定している。安易に考え、そして一気に拡散するSNSの怖さである。便利なSNSであればこそ「待てよ」と立ち止まることが必要だ。
活字離れが語られ、そして新聞を読まなくなったとも。情報発信の仕事を手掛けているかつての会社の後輩から「実は若者は活字には触れている」という話を聞いた。だが、聞けば活字を追って読んでいるというより「活字を見ている」ということのようだ。それもじっくりと読まずに。
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1月は「荘内日報」が産声を上げた月に当たる。1946年1月14日、前身の「荘内自由新聞」が創刊され、49年10月に現在の「荘内日報」に改題した。来年は創刊80年を迎える。庄内という地域に根差した新聞だが、長く人々に読まれてきたということは、地元のニュースを読み、自分たちが住んでいる地域のことをよく知りたいからにほかならない。
新聞が伝える情報量は膨大だ。新聞を読むには面倒さが伴うが、隅々まで目を通すことは人々の知性、教養、文化、学習などを高め、物忘れにならない効果もあるといわれる。何よりも新聞は間違った情報を伝える事はない。万一間違いがあれば「訂正」や「お詫び」をすることになるが、それは新聞にとって一番不名誉な事。新聞作りの基本は「確認」することにある。
スマートフォンがあれば、多くの情報を入手でき、瞬時に他に拡散させることも可能だ。ただ、見たいもの、興味のあるものだけ見て信用し、そうでない事は信用しようとしない傾向はないだろうか。人が困る様子を喜ぶような風潮がネット社会にはあることも指摘されている。真偽を確かめようと、慎重に考えなくなったのは、安易さに流されて学ばなくなったためではないかと言われる。
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新聞での情報は「新聞に出ていた」などとした、口コミで広がるところが大きい。それは波紋が広がるのと似るが、SNSは一瞬で拡散する。それが偽情報であれば他者を傷つけ、人権を侵害することもある。「表現の自由」は公益のためのものであって、偽情報にその自由は存在しない。
荘内日報は「地域の経済と文化の発展に貢献する」を、社是の一つとしている。「意見や主張(発言・発表)などを訴える手段を持たない人々に代わって、その訴えを伝えていく」ことも使命としている。情報の速報性はSNSのようにはいかないが、しかし、正しい情報をしっかり伝えていくことに徹している。創刊79年目の荘内日報が貫く姿勢に思う事だ。