2025年(令和7年) 2月18日(火)付紙面より
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酒田市黒森地区に伝わる農民芸能「黒森歌舞伎」(県指定無形民俗文化財)の正月公演が15、17の両日、同地区の日枝神社常設演舞場で上演され、地元住民のほか県内外から大勢の歌舞伎ファンが訪れ、地元役者の名演を楽しんだ。
黒森歌舞伎は江戸時代中期の享保年間(1716―35年)から地区住民らによる一座・妻堂連中(五十嵐良弥座長、46人)が地区の鎮守・黒森日枝神社の神事の一環として連綿と受け継いできた。正月公演は寒さの厳しい2月中旬に上演されることから「雪中芝居」と呼ばれている。
今年の本狂言「近江源氏先陣館(おうみげんじせんじんやかた)」は、2008年以来17年ぶり6度目の上演。鎌倉時代に戦場で敵同士となった兄・佐々木盛綱の元に弟・佐々木高綱の子・小四郎が生け捕られ、父のために小四郎が切腹をするという、戦に引き裂かれる家族の悲劇を描いた演目。今回は北条時政の前で小四郎が父を助けるため切腹する「盛綱陣屋の場」一幕を上演した。
初日は晴天に恵まれ、本狂言の前に黒森小3―6年生12人が少年歌舞伎として「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)」の一幕、白浪五人男が名乗りを上げる「稲瀬川勢揃いの場」を披露した。
舞台上で地元役者が勇壮な演技や堂々と見えを切ると、客席からは大きな大向(おおむこ)うや拍手が湧き、にぎわいを見せていた。