2025年(令和7年) 2月19日(水)付紙面より
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国会は2025年度予算案審議が大詰めを迎えた。年度内に成立させるには、3月2日まで衆院を通過させなければならない。しかし、少数与党の自民、公明だけでそれはできず、野党の協力を得なければならない。自民党1強時代は予算案が修正されることはまずなかったが、今回は野党が求める修正案をどこまで反映させるか、妥協点を探る駆け引きが続いている。
野党は予算案審議を国民に存在感をアピールする好機と捉えている。立憲民主党は財源捻出案を示して約3・8兆円の修正案を出した。夏の参院選に向けて弾みをつける思惑もあるという。どのような決着になるかだが、与野党とも国民生活最優先にした政治運営をしなければならない。
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少数与党の石破茂政権は苦しい。与野党の折衝で予算案が一部修正されることで、国民生活に「利」がもたらされるのであれば好ましい事だ。しかし、野党が掲げる要求を“満額的”に満たすとなれば財政負担が増えて、国家財政が破綻する。「今さえ良ければ」で将来世代に負担を残すことは政治の無責任になってしまう。
財務省によれば、24年12月末の国債と借入金などを合計した、いわゆる「国の借金」は、1317兆6365億円、前年比31兆1845億増加したという。国民1人当たりに換算すれば、1100万円近くの金額になる。債務残高はGDP(国内総生産)の2倍を超え、主要先進国の中で最も高い水準だ。企業業績の好況で税収は増えているが、税収だけでは歳出を賄えず、予算編成は新規国債発行に頼っている。
新年度予算案で野党が求める修正案はガソリン価格引き下げ、高校授業料無償化拡大、福祉施設で働く人の処遇改善など多岐に及ぶ。自民、公明、国民民主の3党は、学生アルバイトの所得税がかかり始める「年収103万円の壁」を123万円とし、さらに引き上げるが、国民民主が求める178万円とするには7~8兆円の税収減になる。それを補う財源確保の道筋は見えていない。
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全国の中学卒業者の高校進学率は約99%になり、半ば“義務教育化”していることからすれば、授業料の無償化は当然とも言える。ただ、公立を基準とすれば私立との差、不公平感を生じさせない事が肝要だ。「人づくりは国の基」であり、国際競争力を担う人材を育てることにつながる、教育の環境整備であろう。
新年度予算は新規国債を発行しないと成り立たないという、限られた予算でいかに国民生活を安定させることができるか。与野党が英知を突き合わせて折り合いをつけ、財政をより健全にして将来世代につなげていく最善策を見いだす。「党利」の前に、政治が目指すのは国民の幸せであることを肝に銘じなければならない。