2025年(令和7年) 3月11日(火)付紙面より
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酒田市黒森地区に江戸時代中期から伝わる農民芸能「黒森歌舞伎」(県指定無形民俗文化財)の「太夫振舞(たゆうふるまい)」が9日、地区内の黒森日枝神社で開かれた。これに先立って来年2月に行われる正月公演の演目を決める「神撰(しんせん)の儀」が行われ、演目は「加賀見山旧錦紅(かがみやまこきょうのにしきえ)」に決まった。
太夫振舞は芝居奉納を受けた神社が役者らを招き開く宴(うたげ)。これに先立ち、水ごりで身を清めた若者がご神体に代わって翌年の演目を選び出すのが神撰の儀で、神事的芸能の要素を残す黒森歌舞伎独特の儀式として伝わる。
神撰者は、今年の正月公演でも役を演じた五十嵐漣さん(15)=酒田四中3年。五十嵐さんは神社でおはらいを受けた後、下履き姿で社殿を出て境内の井戸で水ごり。手おけで7杯半の冷水を浴びて再び神前に正座し、竹の棒に付けたこよりで、一升ますの米の上に置かれた演目候補のくじ3本から1本を引き寄せた。
五十嵐さんは「寒くて大変だったが、周囲の応援のおかげで頑張ることができた。高校生になるが、引き続き来年の公演に向けて精進していく」と。黒森歌舞伎一座・妻堂連中の五十嵐良弥座長によると、「加賀見山旧錦紅」は2005年以来、21年ぶりの上演という。
五十嵐座長は「『女忠臣蔵』とも称される演目で、女形(おやま)が主役。黒森歌舞伎は近年、女形が充実していることもあって良い演目になった。来年も面白い場面を披露したい」と話した。