2025年(令和7年) 3月11日(火)付紙面より
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東日本大震災から11日で14年。被災地の復興は進んでいるというものの、庄内には今も故郷に戻らず避難生活をしている人が、2月1日時点で154人(福島121人、宮城31人、岩手2人)いる。福島が多いのはもちろん東京電力福島第一原発事故の“後遺症”が尾を引いているということであろうか。避難生活が長くなるほど子どもの教育問題なども絡んでくる。
県は東日本大震災を風化させないため3月11日を「県民防災デー」と定めている。県民各自が防災を考え、地域の人同士で助け合う仕組みを学び、行動する防災対策意識を高めるのが狙い。災害時の相互扶助も大事だが、併せて普段から自分の心に「防災の防波堤」を築いていることこそ大事ではないだろうか。
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14年前に比べ、避難生活をしている人は大幅に減った。しかし、14年という歳月の流れは、故郷に帰りたいという望郷の念まで薄れさせてしまうのだろうか、避難生活が長引くほど、親自身も「帰郷」の言葉に距離を置くようになり、そして、子どもは今いる庄内が故郷になりつつあり、親子とも心が揺れ動く日々ではないだろうか。
震災の復興が遅れているのは原発事故後の廃炉作業が進まないためだ。原子炉内には約880トンの核燃料デブリが残っている。2030年から本格的な取り出しを始め、51年をめどに廃炉を完了するとの行程が描かれているが、あくまでも予定。高い放射線量が残り、長期間にわたって居住が難しいという帰還困難区域がある以上、震災からの復興はできないということになる。原発事故の罪深さだ。
日本は50年に温室効果ガスを大幅に削減する目標を掲げている。政府は再生可能エネルギー導入を促進する一方、経済性から安全を追究した原子力利用を進めるとしている。しかし地下300メートルより深い場所に埋めるという「核のごみ」の最終処分地が決まっていない。最終処分地の「文献調査」実施では、北海道の2町村で住民の賛否が割れた。原子力への不安からだ。
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地震列島の日本で、いずれ発生すると予測されている南海トラフ地震では、最悪で最大30メートルを超す津波が押し寄せ、32万人余の死者・行方不明者が出るとの予測もされている。政府は南海トラフ地震で、事前に臨時情報(巨大地震警戒)が出た場合1週間の事前避難を求めている。昨年8月の宮崎県沖の地震で臨時情報が出されている。
庄内でも日本海にある地震空白域、庄内平野東縁部を走る断層帯など、大きな地震につながる場所の存在が指摘されている。突然発生する自然災害は避けようがない。しかし、手をこまねいているわけにはいかない。「いざ」の時に備えとして、自分の心に「防災の防波堤」を持ちたい。東日本大震災14年目の日に思うあれこれである。