江戸時代の藩校・致道館や市内を流れる内川など、城下町の風情が脈々と息づく鶴岡市には、藤沢文学のルーツを求めて訪れる観光客が少なくない。
藤沢さんの出身地である同市の高坂地区に近い湯田川温泉の旅館「九兵衛旅館」の女将・大滝澄子さんは、藤沢さんが旧湯田川中学校で1949(昭和24)年から2年間、教師生活を送ったときの教え子。藤沢さんが帰郷する際に定宿にしていたなど親交があり、97年に藤沢さんが亡くなってすぐに同旅館内に直筆の色紙や手紙、写真などを展示する「特設コーナー」を設けた。
「先生の人柄や思い出を聞きたいと尋ねて来られる方もいらっしゃいます。今でも根強い人気を感じます」と澄子さん。「映画は庄内にとってチャンス。藤沢文学に引かれ、熱い思いで来られる方々に、この地域の風土や文化など何か感じられる機会を提供できたら」と話している。
一方、湯田川温泉には藤沢さん以外にも、戦前・戦中にかけて活躍し「小説の神様」と称された横光利一、美人画家として現在も根強いファンがいる竹久夢二などが訪れており、多くの文化人に愛された地域としても知られている。藤沢文学だけでなく、こうした文化人の足跡を感じられるのも同温泉の魅力のひとつとなっている。
九兵衛旅館
電話 0235(35)2777 FAX 0235(35)3477
URL http://www.kuheryokan.com/