鶴岡藤沢周平文学愛好会(萬年慶一代表)の公開講座が7月5日、鶴岡市勤労者会館で開かれ、市民らが講演などを通して羽黒山伏を主人公にした小説『春秋山伏記』について理解を深めました。
同愛好会は、鶴岡市出身の作家・藤沢周平さんの作品の本質を学び、人生の糧とすることを目的に1998年に発足しました。市民を対象にした公開講座を毎年開いています。10回目の今年は出羽三山「丑歳御縁年(うしどしごえんねん)」に合わせて、『春秋山伏記』をテーマにしました。会員や市民、山形市のファンなど計約170人が聴講しました。
第1部では、同会顧問の松田静子さんが、藤沢さんが『春秋山伏記』を執筆することになったきっかけや内容などについて解説。「この小説は山伏が主人公のようでありながら、純粋な“村”または“村人”を描いている藤沢作品で唯一の異色の時代長編です。私たちが忘れているような庄内弁がたくさん登場し、藤沢さんの古里の言葉への思いが感じられます」と話しました。
また、若い山伏の大鷲坊、3歳の娘を連れて出戻ってきたおとしなど登場人物に触れながら、「村人たちの喜怒哀楽がとても身近に感じられ、江戸末期という遠い時間を感じさせません」とし、「とりわけ第1章の『験試し』では、心の病に取りつかれ生きる気力を無くした娘を、再び生の世界へ連れ戻す大鷲坊の姿に、現代の人間、特に親世代の人たちに強い示唆を与えてくれるものがあります」と指摘しました。
続いて、会員の墨井松生さんが「験試し」の一部を朗読。第2部では日本民俗学会会員で県文化財保護協会会員の戸川安弘さんが「山伏の昔と今」と題して講演しました。