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海坂藩旅歩き

講演や座談会で藤沢周平さんをしのぶ「寒梅忌」

作家・藤沢周平さんをしのび行われた「寒梅忌」

鶴岡市出身の作家・藤沢周平さんをしのぶ「第11回寒梅忌」が1月17日、鶴岡市中央公民館で開かれ、追悼式や藤沢さんと交流のあった地元の人々が思い出を語り合いました。また、文芸評論家の高橋敏夫早稲田大大学院教授が記念講演を行い、藤沢文学の魅力について語りました。

寒梅忌は、鶴岡藤沢周平文学愛好会(萬年慶一代表)が藤沢さんの命日の1月26日に合わせ、2000年から毎年1月に開いているものです。今回は地元や県内各地、関東、関西、四国などから同愛好会の会員ら約400人が参加しました。

追悼式では、ステージに掲げられた笑顔の藤沢さんの遺影に黙とうを捧げ、萬年代表が「今春には記念館が開館します。藤沢文学が示し続けた人と人とのつながりを、古里の鶴岡から発信していきたいです」とあいさつ。献花に続き、オカリナ演奏で「千の風になって」などが披露されました。

しのぶ会では、同愛好会顧問の松田静子さんの進行で、藤沢さんが生まれ育った同市高坂地区の住民を中心に組織する「藤沢周平著書保存会」の小菅隆次さん、斎藤昭子さん、佐藤久雄さんが座談会。藤沢さんが著書が出版されるたび父親の実家に送ってきていた書籍を高坂地区の共有財産として保存しようと、30年前に保存会が発足した経緯を説明し、「高校時代に藤沢さんから勉強を教えてもらいました」「古里を愛していた藤沢さんは、その古里が変わっていくことを嘆いていました」などと、思い出を語り合いました。

高橋教授は「藤沢周平の『誕生』」と題して講演。「藤沢周平は、戦後の高度経済成長とバブル経済のそれぞれの終わりの時期に誕生しました」と指摘し、バブル後から今も続く時代小説ブームの立役者であり、国民的作家であると解説しました。「藤沢さんは、高度経済成長やバブル経済と社会全体が前を向きながら進んでいた時代にあって、よく見えなかった人間の心の傷を見つめようとしていました。そのことが、時代の終わりにあって『誕生』したことにつながり、受け入れられたのではないでしょうか。これは偶然ではなくある種の必然でした」と語りました。

また、藤沢文学の魅力について「時代や社会、時代小説のあり方に強い反発心を持ち続けていた。心の中に激しいものを持っていた。その中で人の痛みや心の傷を見つめ、人と人とのつながりや豊かな感情など人間の根本にあるものを描こうとした」と紹介し、「藤沢さんほど古里とのつながりが深く、大切にした作家はいません。地元でそのことを毎年確認してもらえる作家もいないと思います」と語りました。

サイト掲載日/2010年01月28日
海坂かわら版
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