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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

胃がんの内視鏡治療

本間 清明 (山形県立日本海病院内科・消化器科医師)

本間清明医師

近年、全国的に胃がん検診で、治療可能な多くの胃がんが見つかるようになり、胃がんの死亡率が低下してきております。しかし、ここ庄内では胃がん検診を受けない方々が多いのが現状です。ぜひ検診を受けていただき、後述のような恩恵にあずかれる方々が増えてくることを切に願っています。

さて本題です。

現在、いわゆる胃カメラ(内視鏡)の技術革新は止まることなく日進月歩の状況です。細いチューブの先にテレビカメラを備えてその先からは手(鉗子)を出し、胃の中で作業できるまでになりました。かつて胃内視鏡は太くて検査されるのが大変でしたが、今ではかなりの細さとなり、いずれはカプセル内視鏡にまで発展しようとしています。この内視鏡を使い、検診でチェックされた方々の検査をするのが私たちの仕事ですが、内視鏡でくまなく胃の中をのぞいていると、たまに胃がんが見つかってきます。

昔の胃がん治療は、大きくおなかを切り開いて手術する方法が一般的でした。しかし、手術で胃を切除するとその後の食が細くなったりといった不具合も生じることが少なくありません。先に述べましたように内視鏡技術の進歩により、胃がんを内視鏡で治療できるようになりました。特に、スネアといわれる針金の輪をがんの周りを縛り付けて電流を流し切除する、内視鏡的粘膜切除術(EMR)が広く行われています。これによってがんを切除してがんの根のはり具合を顕微鏡で見て、転移の心配がない状態であれば手術をする必要がなく治療は終了です。すなわち、根のはってない小さな胃がんはこれで治ってしまうようになったのです。

大型の胃がん(星印部)をESDで一括切除

ところが、今までは根ははってないものの、がんが大きい状態で見つかってしまった場合は、手術となることがほとんどでした。これは、前述のEMRで切除できる大きさは2cmと限界があったためです。この大きな早期胃がんを何とか内視鏡で治療できないかということで、5年ほど前から内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という治療方法が開発されました。内視鏡の先端から電気メスを出して胃の内側からがんを切除します。電気メスで少しずつ切るため、大きさに限界はありません。スネアを縛り付ける方法ではなく、電気メスを用いての細かな操作になるため難しい治療法ですが、大きな病変であっても一つの塊として切り取ることができます。従来は手術された大きなものも早期の胃がんであれば内視鏡でとれるようになりました。

当院でもこのESDという新しい治療法が世に出てきたのと同じ5年ほど前から取り入れて行っております。現在山形県内はもとより東北地区でも一番多い件数を治療しています。難しい治療法ですが、治療に伴う偶発症は世界で一番少なく安全に行っているのが誇りです。特に、使う道具や内視鏡についてもさらに安全でより良いものをメーカーと協力しながら開発し、これらの開発品を庄内から日本はもとより世界中に発信・提供しております。小生も地元の出身だけに、このような進んだ技術を世界的レベルで提供できることをうれしく思って頑張っています。

胃がんにならなければならないにこした事はありませんが、誰でも胃がんになる可能性は全くないわけではありません。逆に、早期の胃がんの中でも早いものは内視鏡で治り、地元庄内にいながら進んだ治療が受けられる状況が整っております。日々お忙しい中「もっけだんども」進んで検診をお受けいただきますようお勧めしいたします。私どももさらによりよい医療を提供できるよう努力してまいります。

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