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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

胆のう、胆管、すい臓の病気について

古屋 紀彦 (山形県立日本海病院内科・消化器科医長)

古屋紀彦(県立日本海病院内科・消化器科医長)

胆のう、胆管、すい臓はおなかの上のほうにあって、それぞれが非常に近いところに存在しています。したがって、どれかひとつが病気になった場合、ほかの2カ所の臓器に影響をあたえる可能性が少なくありません。

たとえば、胆のうに石(胆石)がある人は、胆のう自体が腫れて痛みを伴う胆のう炎を起こす可能性があります。しかし、それだけにとどまらず、その胆石が原因で同時に胆管炎や膵炎が合併することがあるのです。

また、逆にすい臓にがんができた場合は、胆のうや胆管が腫れて、炎症を起こしたり、皮膚が黄色くなる『黄疸』という症状が出てきます。

ところで、よく「膵臓のがんは見つかった時には手遅れのことが多い」といわれています。たしかに胆のう、胆管、すい臓領域のがんは早期発見が難しく、また、ある程度がんが大きくなってしまうと近くにあるお腹の大事な血管をまきこんでしまうため、手術でとりきれなくなることが多いというのがその理由としてあげられます。では、ふだんの生活のうえでどういったことに気をつけていけばよいでしょうか?

Q 胆石があるとどんな症状がでるの?

胆石をもっているひとのほとんどは無症状です。つまり、検査を受けない人は胆石があることにも気付かず、寿命を全うするというひとも結構いらっしゃいます。胆石のできやすい条件としては(1)肥満、(2)40歳代に比較的多い、(3)男性より女性のほうが比較的できやすい―といったことがいわれています。

自分に胆石があるかないかを知る最良の方法はやはり、腹部超音波(エコー)の検査を受けられることをお勧めします。その理由として、胆石の成分によってはCTに写らない石もあることがあげられます。また、腹部超音波の機械は総合病院であればまず、置いてないところはありませんし、開業医でも設置しているところは多くなってきています。なにより検査にかかる時間は10分前後で、お腹にゼリーをぬって機械をなでてあてるだけですので苦痛なく受けられます。さらに、この腹部超音波の検査では胆のうばかりでなく、すい臓、胆管、肝臓、腎臓、脾臓といった他の臓器も同時に診れますし、胆石のみならず腫瘍性の病気もみえますので、がんの早期発見にも役立ち、簡便でありながらも比較的高度な検査といえると思います。もし、この検査で異常がみつかれば、さらに腹部CTやMRIといった検査をしていくことになります。

話は前にもどって、胆石のほとんどが無症状と言いましたが、ひとたび胆石が悪さをすると、すなわち胆のう炎や胆管炎を起こすと症状が現れます。主要な3症状として(1)腹痛、(2)発熱、(3)黄疸があげられます。

腹痛の場所は主に右の1番下のあばら骨のあたりかもしくはみぞおちのあたりに出てくるのが一般的です。なかには背中の痛みや、右肩にぬける痛みがでる人もいます。黄疸は先ほどもお話ししたように、皮膚が黄色くなる症状ですが、肌の色は個人差もあるので初期の段階では気付かない場合もあります。そこでだれでもわかりやすいのは、眼球の白目の部分が黄色くなってないかを見るとよいと思います。また、黄疸が強くなると尿の色が濃くなってきます。時々勘違いされて「血尿かな?」と思うひともいるようですが、黄疸の場合もあるので気をつけてください。

さらに、胆のう炎などを長期に放置しておくと意識障害やショックといった死に至る重篤な状態に移行していくこともありますので、思い当たる点がある時は早めに医療機関を受診してください。

Q 症状のない胆石は放っておいていいの?

胆石は自然に消えてなくなることはまずないですし、溶解剤をのんでも溶けてなくなる例はまれです。また、胆石のある胆嚢にはまれにがんを合併する場合もありますので、そのままにしておいていいかどうかは、専門医の判断をあおぐようにしましょう。

治療が必要な場合は外科で胆のうを摘出してもらうことになります。また、治療が不要の場合でも、胆石が大きくならないかどうか、1年に1回程度定期的に腹部超音波検査を受けるとよいでしょう。そうすることで同時に、膵がんや胆管がんの早期発見にも役立ちます。

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