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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

前立腺がんの診断と治療

柿崎  弘 (山形県立日本海病院泌尿器科医長)

柿崎 弘(県立日本海病院泌尿器科医長)

前立腺は男性にだけある臓器で、精液の一部をつくっています。尿の通り道である尿道を取り巻くように膀胱の下にあります。ここにできたがんが前立腺がんで、アメリカでは男性で最も多いがんであり、わが国でも食事の欧米化や高齢化に伴い増加しています。症状では特有なものはなく、尿が出にくい、尿の回数が多いといった前立腺肥大症と同様の症状がでます。最近では症状もなく、健康診断や人間ドックで見つかることが増えています。

特に前立腺特異抗原(PSA)を測定する機会が多くなってから早期発見される前立腺がんが非常に増えてきました。PSAは前立腺に特異的なタンパク質の一種ですが、前立腺がんになると血液中の濃度が上昇します。かなり鋭敏な検査で、採血だけで前立腺がんである可能性が推測できる検査です。このほか前立腺がんの診断には直腸診(肛門から指で前立腺を触る)や経直腸的超音波検査(肛門から超音波の機械を入れて前立腺をみる)を行い、PSA、直腸診、超音波検査のどれかに異常があれば精密検査が必要になります。

精密検査は前立腺生検といって前立腺に針を刺して組織を一部採取して、顕微鏡でがんがあるかを診断する検査です。痛みを抑える目的で麻酔を行うため、通常短期間の入院が必要となります。

前立腺がんと診断された場合、次にがんがどこまで広がっているかを調べます。これが病期の診断です。前立腺周囲への進展、リンパ節転移や骨転移の有無を知るために、腹部CT、骨シンチグラムなどの検査を行います。以上の検査で大きく「前立腺にだけがんがある場合」「前立腺周囲にがんが進展している場合」「リンパ節や骨にがんが広がっている場合」、このようないくつかのグループに分けて治療を決めます。

前立腺がんの最初に行う治療法として、ホルモン療法、外科療法、放射線療法があります。

1.ホルモン療法

前立腺がんは、男性ホルモンがあると増殖していきます。男性ホルモンを出さないようにすれば前立腺がんの多くは増殖が抑えられます。ただし長期間になるとホルモン治療で抑えきれないがんが増殖していくこともあります。男性ホルモンを抑制する方法として、男性ホルモンを作っている精巣(睾丸)を摘除する方法(去勢術)と注射で男性ホルモンが作られないようにする方法があります。

2.外科療法

がんが前立腺内に限局している時、手術によりがんをとり除く方法です。下腹部を切開し、前立腺を摘除し、膀胱と尿道を吻合します。この時、リンパ節に転移があるかを調べます。

3.放射線療法

放射線を使ってがん細胞を死滅させる方法です。身体の外から患部である前立腺に放射線を照射する外照射と前立腺に放射線を照射する物質を埋め込んだり、針をさして前立腺の中から照射する組織内照射があります。

治療は、がんの進行度、年齢、ほかに病気があるかなどの条件から決めていきます。それぞれの治療法の利点や欠点を良く主治医と相談した上で治療法を決めていくことが大切です。

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