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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

狭心症と心筋梗塞の治療・内科的(1)

高橋 大 (山形県立日本海病院内科・循環器科医師)

高橋 大(県立日本海病院内科・循環器科医師)

心臓は寝ても覚めても常に私達の体全体に血液を送り続けてくれる、とても働き者の臓器です。個人差はありますが、1日24時間で大体10万回くらい動きます。単純計算で平均寿命を80歳とすると、一生涯に10万×365日×80年=約30億回(29億2000万回)も働き続けてくれる計算になります。

そんな働き者の心臓ですが、さすがに何の栄養も酸素も必要とすることなく働いてくれることはありません。むしろ働き者の分だけ、その見返りとしての栄養と酸素をものすごく要求してきます。

冠動脈の図

このような働き者で欲張りな心臓に栄養と酸素を供給してくれる血管には名前が付いていて、冠動脈(かんどうみゃく)と呼ばれます。この冠動脈は直径が2~5ミリくらいの血管で、心臓から大動脈へ出た直後から右冠動脈が1本、左冠動脈が1本分枝します。左冠動脈はまたすぐ2本に分かれますので、冠動脈には本幹と呼ばれる太い血管が合計3本あることになります(それぞれ右冠動脈、左冠動脈前下行枝、左冠動脈回旋枝と呼びます)。本幹から細い側枝が出て、心臓を隅々までカバーすることになります。

人間の体はうまいことつくられていて、この冠動脈が動脈硬化などで詰まったり、詰まりかけたりして心臓への栄養や酸素が供給不足になると、胸痛という症状で心臓がSOSサインを出してきます。この冠動脈が詰まりかけている病態が狭心症です。典型的な症状としては、坂道を歩く、除雪するなどの普段より体に負荷がかかった時に胸の真ん中から首、肩にかけて締め付けられる様な胸痛があげられます。また、冠動脈が完全に詰まってしまう病態が心筋梗塞です。これまでに経験したことのないような激しい持続性の胸痛が典型的な症状です。冠動脈が詰まってしまった末梢の心臓は全く血液が供給されなくなってしまいますので、放っておけば心臓が働くことを辞めてしまい、その結果死に至る恐ろしい病気です。

狭心症と心筋梗塞の内科的治療法には大きく分けて薬物療法と風船治療(経皮的冠動脈形成術)の2つがあります。狭心症と心筋梗塞のどちらも、風船治療やバイパス手術によって早期に血行再建を行うことが基本となりますが、これらに関しては次回に譲るとして、今回は安定した狭心症に対する薬物治療についてご説明したいと思います。

ベルトコンベアーを歩く検査(トレッドミル検査)や階段上り下り検査(マスターダブル検査)、24時間心電図検査(ホルター心電図)、冠動脈CT検査などで狭心症が疑われた場合、造影剤というレントゲンに写る薬を使って実際に血管を写してみる冠動脈造影を勧められます。この検査で冠動脈に狭い部分があって、症状もある場合に狭心症と診断されます。また、全く狭いところがないものの発作時に血管が勝手にけいれんを起こして狭くなってしまう狭心症(異型狭心症)も時に見られます。

造影に狭い部分があっても正常部分の血管径の50%以上が保たれている場合や、異型狭心症の場合は、まず生活習慣の改善に加え薬物療法を行います。禁煙、規則正しい生活、適正なカロリー、減塩を守ってもらい生活習慣の改善を図ります。薬物療法では、血を固まりにくくするアスピリンの他に、血管を拡張させる硝酸剤(いわゆるニトロ)、心臓の仕事負担を軽減するために血圧を下げる薬などが使用されます。他にもコレステロールを下げる薬も狭心症に有効といわれています。

これらの薬物療法などによっても症状が消失しない場合などには、風船治療などの侵襲的な治療が選択されます。次回は風船治療を中心にお話しさせていただきたいと思います。

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