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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

高血圧(2)

池田 真梨子 (山形県立日本海病院内科・循環器科医師)

池田真梨子(県立日本海病院内科・循環器科医師)

今回は、高血圧の治療や管理について説明させていただきます。

健康診断で高血圧を指摘されて外来受診される患者さんはたくさんいます。まず外来で血圧を測り高血圧と診断された場合、原因検索を行うとともに表1のように高血圧の治療を進めていきます。高血圧は表2の通り、血圧によって軽症、中等症、重症に分類されており、さらに糖尿病、心血管病などの危険因子によって低リスクから高リスクに区別されています。同じ高血圧患者さんでも、これらリスクによって脳梗塞(のうこうそく)や狭心症などの合併症が起こる確率は異なり、そのため血圧を下げる目標期間が異なります。リスクが高くなるほど早急に血圧を下げなければならないのです。

表1、表2

また、年齢や糖尿病の有無により目標血圧も異なります。若年・中年者は130/85mmHg未満を、高齢者は年齢により140~160/90mmHg未満を、糖尿病や腎臓の疾患を持っている患者さんはさらに低く130/80mmHg未満を目標としています。

では、生活習慣の修正とは実際何に気をつければいいのでしょうか。最も重要なのは塩分制限です。食塩の過剰摂取が血圧上昇に働いていることは既に証明されており、高血圧患者さんは塩分1日6g未満が目標となります。健康日本21など減塩の啓蒙活動により、平成14年の日本の平均食塩摂取量は1日11.4gと徐々に下がってきてはいますが、まだまだ多いことは確かです。

そのほかに、野菜や果物を積極的に摂取すること、コレステロールや動物性脂肪に多い飽和脂肪酸やアルコール摂取を控えること、禁煙なども挙げられています。また、適正体重の維持としてBMI =体重 (kg) ÷〔身長 (m)〕² が25を超えないようにすることなども推奨されています。

同じ高血圧患者でも年齢、リスクによって目標とする値はそれぞれ異なっているため、数多くの降圧薬からそれぞれの患者さんに合ったものを主治医が調節しています。「血圧を測ったら高かったので友人や家族の薬を飲んだ」という話を時々ききますが、血圧が低下しすぎることもありますので危険です。また、血圧が正常になったので自己判断で内服を中止してしまう患者さんもいます。降圧薬の中には、血圧を下げるだけでなく臓器を守る作用のある薬など、様々に働く薬もありますので、必ず主治医と相談するようにしてください。

降圧剤を初めて内服する患者さんに、「一生薬を飲まないといけないのでしょうか?」と聞かれることがよくあります。降圧剤の内服により逆に血圧が下がりすぎる場合には中止、減量することもありますが、ほとんどの患者さんは生活習慣の修正だけでは不十分であり、降圧剤を飲み続けなければならない患者さんが大半です。

最近、外来では血圧が高く医療以外の環境では血圧が正常な白衣高血圧やその逆である仮面高血圧(逆白衣高血圧)などの患者さんも耳にします。白衣高血圧は高齢者や女性に多いといわれ、外来高血圧患者さんの20~30%の頻度でみられるといわれています。このような患者さんもいるため、家庭での血圧測定が奨励されています。月に1回の外来での血圧測定よりは、家庭での血圧測定のほうがより正確であり、降圧剤の効果判定もしやすくなります。1日少なくとも朝と夜の2回、朝は起床から午前10時までの排尿後で坐位1~2分の安静後に、夜は就寝前の坐位1~2分の安静後に血圧測定することが推奨されています。

高血圧は、ごくありふれた疾患とは思いますが、実は心臓病や脳血管疾患などの原因となりうる恐ろしい病気です。これらを予防するためにも、高血圧を放置せず早めに医療機関に相談することをお勧めします。

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