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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

糖尿病(1)

木村 守 (山形県立日本海病院 内科医長)

木村守(県立日本海病院内科医長)

糖尿病は今や国民病といわれるほど患者さんが増えています。2002年に行われた厚生労働省の糖尿病実態調査では我が国の糖尿病を強く疑われる人は約740万人、糖尿病の可能性を否定できない人をあわせると約1620万人と推定されており、1997年に行われた同調査と比較するとそれぞれ50万人、250万人の増加でした。しかし実際に医療機関で治療を受けている人は糖尿病を強く疑われる人の半数程度にすぎないこともわかっています。糖尿病は初期には自覚症状がないことが多く、検診などでわかっても放っておかれることが少なくありません。しかし自覚症状がない状態でも、合併症が知らぬ間に進行し、失明や、腎不全になって初めて糖尿病の恐ろしさに気づくこともあるのです。

私たちの体は日々の生活のエネルギーとして主に食物の中のデンプン質を利用しています。デンプン質は腸の中でブドウ糖に分解され、血液中に吸収されます。血液中に入ったブドウ糖(血糖)は筋肉や肝臓に運ばれ、体を動かすエネルギーとして利用されますが、このときに膵臓から出るインスリンというホルモンが必ず必要になります。インスリンの働きが足りないと血液中のブドウ糖をうまく使えなくなるため血糖値が上昇します。ある程度血糖値が上昇した状態を糖尿病と定義しています。

●糖尿病の診断

空腹時血糖が126mg/dl以上もしくは随時血糖が200mg/dl以上、ヘモグロビンエーワンシー(過去2カ月間の平均血糖を調べる検査)が6.5%以上の時に糖尿病と診断されます。

●糖尿病の種類

1型糖尿病

膵臓のインスリンを作る細胞が免疫の異常などの原因で破壊され、インスリンがでなくなってしまうためにおきます。主に15歳以下の小児期に比較的急激に発症することが多く、治療が遅れると血糖が著しく上昇し昏睡状態となることもあります。多くの場合インスリン治療が必須になります。

2型糖尿病

体質(遺伝的素因)に肥満、過食、運動不足などの生活習慣が加わることによってインスリンの働きが悪くなりおきます。日本人は20%から30%の人が糖尿病になりやすい体質を持っているといわれており、日本人の糖尿病の約90%がこのタイプです。主に40歳以降に発症することが多いですが、肥満児の増加に伴い、小児期にもこのタイプの糖尿病が増えています。

●その他の糖尿病

妊娠に伴って血糖値が上昇する妊娠糖尿病、甲状腺機能亢進症など内分泌疾患に伴うもの、肝臓疾患、膵臓疾患に伴う糖尿病もあります。

●糖尿病の治療

食事療法

糖尿病治療の基本は食事療法です。自分の体に必要な分量を過不足なく、バランスよくとることが重要です。実際は患者さんの体格にあわせた食事量を決定し管理栄養士による指導を行っていますがポイントは(1)腹7分目、(2)1日3回規則正しく食べる、(3)早食いをさけよくかむ、(4)夕食のまとめ食いをさける、(5)果物、お菓子のとり過ぎに注意するということです。

運動療法

運動には血糖を下げる、インスリンの効きをよくする、筋肉を増強する、心肺機能を高めるなどの効果があります。無理なく一人でどこでもできる運動としてウォーキングや自転車こぎなどがおすすめです。食後に1回あたり30分程度、体がきつくない程度の強さの運動を週に3日以上行うのが理想的です。普段運動をしていない人は運動を始める前に心電図などの検査を受けて運動しても差し支えないかどうか調べてから始めましょう。運動をするにあたって一番大切なことは決して無理をしないことです。

薬剤治療

内服薬とインスリン注射があります。内服薬にはインスリンの分泌を増やすもの、インスリンの効きをよくするもの、食後の血糖上昇を抑えるものなどがありそれぞれの患者さんの病状にあわせて選択されます。

食事療法、運動療法は糖尿病の予防としても効果がありますので糖尿病でない方もぜひ実践をおすすめいたします。

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