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医療最前線 こんにちは元気だのー 癌と生活習慣病を中心に

糖尿病(2)

木村 守 (山形県立日本海病院 内科医長)

木村守(県立日本海病院内科医長)

糖尿病の怖いところは自覚症状がないまま合併症が知らぬ間に進行するところです。糖尿病を長年放っておくと全身にさまざまな慢性合併症をきたし、最悪の場合失明したり、人工透析が必要になったり、死亡することもあります。糖尿病に特有の合併症には神経障害、網膜症(眼底出血)、腎症の3つがあります。

1.神経障害

知覚神経障害と自律神経障害があります。知覚神経障害の症状は足に出てきます。足の異常知覚(しびれや痛み、熱感、冷感)、知覚低下です。異常知覚の場合は初期には夜寝入りばなに感じることが多く、進行すると日中もしびれ、痛みを感じるようになります。知覚低下の場合には痛みを感じにくくなるため、けがに気づかず放置してしまうと、傷が化膿して足が腐ってしまう(壊疽)場合もあります。

自律神経は胃腸の動きや脈拍など自分の意思で調節できない内臓の動きをコントロールしています。自律神経障害では消化機能障害、便秘、下痢、発汗異常、不整脈、膀胱機能障害などを起こすことがあります。

神経障害に対する特効薬は今のところなく、治療は早期に発見して血糖を良くすることが重要です。

2.網膜症(眼底出血)

網膜症は眼の一番奥にある光を感じる膜(網膜)の毛細血管がもろくなって破れ、出血を起こしてしまう合併症です。初期の場合は内科的治療、眼科的治療で治りますが、ある程度進行すると失明してしまうこともあります。年間約3000人が網膜症のために失明しています。

3.腎症

腎臓は体内の老廃物(尿毒素)を尿として体の外にこしとる働きをしています。腎臓の中には尿をこしとるための毛細血管の固まりが何百万とありますが、血糖値が高い状態が続くとこの毛細血管が障害され、タンパクがもれだす(タンパク尿)ようになります。進行すると水分の調節がうまくいかなくなりむくみが出て、血圧も高くなってきます。さらに進行すると尿に出るべき老廃物が体の中にたまり尿毒症になります。尿毒症になると食欲低下、吐き気、貧血などの症状が出現し人工透析が必要になります。年間約1万人の人が糖尿病が原因で人工透析を始めています。

神経障害は自分で気づくことがほとんどですが、網膜症、腎症は初期には自覚症状がなく、知らぬ間に進行し、気づいたときにはすでに手遅れといったこともある合併症です。糖尿病といわれた方(糖尿病の気があるといわれた方も含めて)自分の血糖の状態を把握し、合併症が起きないようにがんばりましょう。合併症を起こさないための血糖コントロール目標は食前130mg/dl未満、食後180mg/dl未満、ヘモグロビンエーワンシー(過去2カ月間の血糖をみる指標)6.5%以下です。

残念なことに毎年かなり合併症が進んだ状態で受診される患者さんがおります。糖尿病といわれたが治療を中断している方に多いようです。治療、検査をしばらくお休みしている皆さん、これを機会にぜひ検査に出かけてください。

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